


推算gfrcreatとは、血清クレアチニン(serum creatinine:Cr)を主な入力値として、年齢および性別を加味し、糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)を推定した値です。検査結果では「eGFRcreat」「eGFR(Cr)」「推算GFR(Cr)」などと表記されることがあります。一般的な単位はmL/分/1.73m2であり、標準体表面積1.73m2で補正された値です。
GFRは、腎臓の糸球体が単位時間当たりに血液を濾過する能力を示す概念です。しかし、日常診療でイヌリンクリアランスなどによる実測GFRを行う機会は限られます。そのため、採血で得られるCrを用いてGFRを推定するeGFRcreatが、腎機能評価の基本的なスクリーニング指標として広く使われています。KDIGO 2024は、CKDリスクのある成人で、血清クレアチニンと妥当性が検証された推算式によるeGFRcreatを初期評価に用いることを推奨しています。KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for CKD
参考)https://kdigo.org/wp-content/uploads/2024/03/KDIGO-2024-CKD-Guideline.pdf
ただし、推算gfrcreatは「Crから推定した腎機能」であって、腎機能そのものを直接測定した数値ではありません。Crには筋肉量、肉食、運動、脱水、薬剤など、GFR以外の要因が反映されます。したがって、単回の推算gfrcreatだけで慢性腎臓病(CKD)の有無、薬剤の最終投与量、腎代替療法導入の時期などを機械的に決めることは適切ではありません。
日本人成人で広く用いられるクレアチニンベースの推算式は、日本腎臓学会が示した日本人のGFR推算式です。血清Crの単位はmg/dL、年齢は歳で入力し、女性には性別係数を乗じます。計算結果は、標準体表面積で補正されたmL/分/1.73m2として表します。日本腎臓学会のCKD診療ガイドでは、成人に対してこの式を用いたeGFRcreat評価が示されています。日本腎臓学会 CKD診療ガイドのGFR推算式
参考)https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/CKDguide2012.pdf
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 男性のeGFRcreat | 194 × Cr-1.094 × 年齢-0.287 | Crはmg/dL、結果はmL/分/1.73m2 |
| 女性のeGFRcreat | 194 × Cr-1.094 × 年齢-0.287 × 0.739 | 性別係数を追加する |
| 体表面積未補正値 | eGFRcreat × 体表面積(m2)÷ 1.73 | 薬物投与などで実測体格を考慮する場合がある |
| 評価の前提 | 成人での日本人向け推算式 | 小児、高度な体格差、特殊病態では別の評価法を考慮する |
例えば、70歳男性でCr 1.0mg/dLの場合、式に当てはめたeGFRcreatはおよそ57mL/分/1.73m2です。一方で、同じCr値であっても40歳男性なら年齢項の影響によりeGFRcreatはより高くなります。このため、「Crが基準範囲内かどうか」だけでは腎機能を十分に判断できません。高齢者ではCrが軽度上昇にとどまっていても、eGFRcreatが低下している場合があります。
また、mL/分/1.73m2という表記は、体格差を補正して腎機能を比較しやすくするためのものです。一方、薬物の腎排泄量を検討するときには、添付文書や薬物動態試験がCockcroft-Gault式によるクレアチニンクリアランス、または体表面積未補正のGFRを採用していることがあります。検査表に記載されたeGFRcreatをそのまま薬剤投与設計に流用せず、対象薬の用量設定根拠と評価指標を確認することが重要です。
推算gfrcreatはCKD重症度分類のG分類に直結する重要な情報ですが、CKD診断はeGFRだけで完結しません。一般に、eGFRが60mL/分/1.73m2未満の状態、または腎障害を示す所見が3か月以上持続することがCKDの基本概念です。腎障害を示す所見には、アルブミン尿・蛋白尿、尿沈渣異常、画像検査における構造異常、病理学的異常、腎移植後の状態などが含まれます。
G分類では、G1は90以上、G2は60~89、G3aは45~59、G3bは30~44、G4は15~29、G5は15未満mL/分/1.73m2です。ただし、G1またはG2であっても、アルブミン尿やその他の腎障害所見がなければ、GFR区分のみを根拠にCKDとは診断しません。反対に、eGFRcreatが60以上でも、持続するアルブミン尿は腎疾患および心血管リスクの重要なシグナルです。
臨床では、「eGFRcreat 58」という数値を見た時点でCKDと即断するのではなく、いつからその値か、尿アルブミンはどうか、Cr上昇の速度はどうか、患者の体格や併存疾患はどうかを順に確認します。特に外来初診や健診後の紹介では、前医データ、健診履歴、処方歴、画像所見を統合することで、慢性腎障害と一過性の腎機能変動を切り分けやすくなります。
クレアチニンは筋肉で産生され、主に腎から排泄されるため、推算gfrcreatは筋肉量やクレアチニン産生量の影響を受けます。筋肉量が少ない高齢者、フレイル・サルコペニアを有する患者、低栄養患者、長期臥床患者、筋萎縮性疾患、下肢切断後、肝硬変などでは、実際のGFR低下に比べてCrが低く出やすく、eGFRcreatが腎機能を過大評価するおそれがあります。
反対に、筋肉量が多い人、激しい筋力トレーニングを行う人、肉類の大量摂取直後、クレアチン製剤を使用している人などでは、Cr上昇が必ずしもGFR低下を意味しないことがあります。トリメトプリムやシメチジンなど、一部の薬剤は尿細管でのクレアチニン分泌を抑制し、実際のGFR変化を伴わずに血清Crを上げることがあります。薬剤開始後のeGFRcreat低下を認めた際には、腎血行動態への影響、真の腎障害、分泌阻害のいずれが関与しているかを臨床経過と併せて確認します。
ただし、シスタチンCも万能ではありません。甲状腺機能異常、炎症、肥満、喫煙、悪性腫瘍、ステロイド投与などでGFR以外の影響を受ける可能性があります。CrとシスタチンCの値が乖離する場合は、どちらか一方を絶対視するのではなく、身体所見、栄養状態、治療内容、経時的推移を再評価し、必要に応じて腎臓専門医への相談や実測GFRを検討します。
推算gfrcreatの実務上の価値は、CKDの早期発見に加えて、薬剤安全性、造影検査前評価、周術期管理、糖尿病・高血圧管理、腎臓専門医への紹介判断にあります。特に、NSAIDs、RAAS阻害薬、SGLT2阻害薬、利尿薬、メトホルミン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗悪性腫瘍薬など、腎機能や体液量の影響を受けやすい薬剤では、eGFRcreatの推移が重要です。
ただし、薬剤導入後にeGFRcreatが変動した場合、数値の変化だけで中止を判断するのは危険です。例えば、RAAS阻害薬やSGLT2阻害薬では、糸球体内圧の変化に関連した初期のeGFR低下がみられることがあります。一方、急激なCr上昇、乏尿、低血圧、著明な脱水、高カリウム血症、浮腫や呼吸困難などを伴う場合には、急性腎障害、循環血漿量低下、心不全、尿路閉塞、薬剤性腎障害などを念頭に緊急度を評価する必要があります。
記録では、単に「腎機能低下あり」と記載するのではなく、「Cr 0.9mg/dLから1.2mg/dLへ上昇、eGFRcreat 62から45mL/分/1.73m2へ低下、いつから変化したかは未確認、脱水所見とNSAIDs使用の有無を確認する」といった形で、絶対値、変化量、時間軸、想定原因、追加評価を明示するとチーム内の情報共有に役立ちます。
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