

「時間外対応加算3」は、診療所が標榜診療時間外において、継続的に受診している患者からの電話等による問い合わせに対応できる体制を評価する診療報酬上の加算です。患者が急な症状変化、服薬に関する不安、受診の必要性などを感じた際、診療所へ相談できる窓口を確保することにより、地域のかかりつけ医機能と休日・夜間の救急医療を支える役割を担います。
ただし、令和8年度診療報酬改定以後は、正式名称が「時間外対応体制加算3」に変更されています。検索語として旧名称の「時間外対応加算3」が引き続き使われる場面は多いものの、届出、院内掲示、ホームページ、患者配布文書、院内マニュアルおよびレセプト点検では、改定後の正式名称を意識して運用することが重要です。改定後は、時間外対応体制加算3として再診時に4点を加算します。旧制度における時間外対応加算3は3点であったため、1点の増点となりました。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf)
この加算は、実際に夜間に電話を受けた行為そのものを個別評価する制度ではありません。診療所が、標榜時間外における問い合わせに対応する体制を整備し、患者へ周知したうえで、その体制を継続して維持していることを評価するものです。したがって、電話問い合わせ件数が少ない月であっても、必要な施設基準と届出、患者周知を満たしていれば、再診時に算定する仕組みです。
なお、「時間外対応体制加算」と、「時間外加算」「休日加算」「深夜加算」などの時間外等加算は混同しやすい点に注意が必要です。前者は診療所の対応体制に対する評価であり、後者は実際に標榜時間外、休日または深夜に診療した場合の評価です。評価対象と算定場面が異なるため、要件を満たす場合には併せて算定されるケースもあります。
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定:外来医療の機能分化・強化等」
時間外対応体制加算3を算定できるのは、施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等へ届出を行った診療所です。病院は対象ではありません。また、対象となる診療行為は再診です。初診料を算定する患者には、原則として本加算を算定できません。日常的・継続的に診療を受ける患者の時間外相談先を確保するという制度趣旨を踏まえる必要があります。
加算3の中心となる要件は、診療所を継続的に受診している患者からの電話等による問い合わせに対して、標榜時間外の夜間の数時間に、原則として当該診療所で対応できる体制を整備することです。対応者は、当該診療所の常勤の医師、看護職員または事務職員等が基本となります。医師がすべての電話を直接受けることまでを一律に求める制度ではありませんが、初期対応を担う者が緊急性を判断し、必要に応じて医師への連絡、外来受診、往診、他院紹介、救急搬送などへ適切につなぐ流れを具体化しておく必要があります。
非常勤職員による対応でも、週3日以上を常態として勤務し、かつ所定労働時間が週22時間以上である医師、看護職員または事務職員等が、標榜時間外の夜間の数時間に対応できる体制であれば、常勤職員による体制とみなすことができます。雇用契約、勤務実態、勤務表、連絡当番表の整合性を確認し、届出内容と実際の体制が乖離しないように管理することが大切です。
phchd(https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/medicalfees-afterhours-requirements)
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 対象医療機関 | 地方厚生局長等へ届出を行った診療所 | 病院は対象外 |
| 算定対象 | 再診を行った場合 | 初診時には原則算定しない |
| 点数 | 時間外対応体制加算3は4点 | 令和8年度改定後 |
| 主な対応時間 | 標榜時間外の夜間の数時間 | 24時間対応は加算1・2との区分差 |
| 主な対応者 | 常勤の医師、看護職員、事務職員等 | 一定要件を満たす非常勤職員も可 |
| 対象患者 | 継続的に受診している患者からの電話等の問い合わせ | 新規患者の無条件な夜間受入れを意味しない |
制度設計上、加算3は「単独で24時間常時対応することは難しいが、診療終了後の夜間の一定時間であれば、自院として相談を受けられる」という診療所に適した区分です。たとえば、平日夜間の診療終了後から22時頃までを電話対応時間とし、休診日や深夜帯は留守番電話等によって地域の救急医療機関などを案内する運用が考えられます。重要なのは、実態のない24時間対応を掲げることではなく、自院が確実に維持できる対応範囲を明確に定め、その範囲内で安全な導線を構築することです。
関東信越厚生局「基本診療料の届出一覧(令和8年度診療報酬改定)」
時間外対応体制加算3では、体制を整えるだけでなく、患者が実際にその連絡先と利用方法を理解できるように周知しなければなりません。患者は夜間に症状が出て初めて連絡先を探すことが多いため、院内掲示だけに依存するのではなく、診察券、予約票、患者向け配布文書、ホームページなど複数の接点で情報を案内することが実務上有効です。
周知する内容には、少なくとも時間外の連絡先、対応する時間帯、相談できる対象者の考え方、緊急性が高い場合の行動、診療所で対応しない時間帯の案内を含めると分かりやすくなります。「夜間も対応します」という抽象的な表現だけでは、患者がどの時間に、どの番号へ連絡し、どのような場合に救急要請へ切り替えるべきか判断しにくくなります。誤解が起きないよう、受診・相談・救急要請の導線を分けて示すことが重要です。
やむを得ない事由により電話等へ即時に応答できなかった場合でも、速やかに患者へコールバックできる体制を整えることが求められます。ここでの「速やかに」は、単に職員の善意に委ねるのではなく、誰が不在着信を確認するのか、折り返しの優先順位をどう判断するのか、折り返し不能の場合にどう記録しエスカレーションするのかを院内ルールとして定める必要があります。
休診日、深夜、休日など、加算3で自院対応の対象としていない時間帯には、留守番電話等により地域の救急医療機関などの連絡先を案内するなど、対応への配慮が必要です。単に「診療時間外です」と録音するだけでは、患者が次に取るべき行動を把握できません。地域の休日夜間急病診療所、救急相談窓口、近隣の救急対応病院などについて、地域の実情に即した案内を事前に確認し、定期的に情報を見直す運用が望まれます。
phchd(https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/medicalfees-afterhours-requirements)
時間外対応体制加算3を新たに算定するには、体制を整えたうえで、所管の地方厚生局または地方厚生支局の事務所へ施設基準の届出を行う必要があります。令和8年度の届出一覧では、時間外対応体制加算3は「時間外3」として整理されており、基本診療料の届出書類とともに、時間外対応体制加算の施設基準に係る届出書添付書類である様式2が案内されています。
kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/kihon_shinryo_r08.html)
届出では、加算区分、標榜診療時間、夜間に対応する時間帯、対応する職員、応答できなかった場合のコールバック体制、患者への周知に用いる連絡先などを、実態に即して記載します。記載内容は、勤務表、電話当番表、院内掲示、留守番電話の設定、患者配布文書、ホームページの掲載内容と整合している必要があります。届出だけが整っていても、実際には連絡がつかない、掲示内容が古い、担当者が不明確といった状態では、施設基準を満たしているとはいえません。
届出後は、受理された書類の写しを適切に保管し、体制変更時に見直せる状態にしておくことが重要です。厚生局の案内では、届出書類は保険医療機関において写しを適切に保管するよう示されています。担当者の退職、電話番号の変更、診療時間の変更、夜間対応時間の変更、非常勤職員の勤務条件の変更などがあれば、届出内容への影響を確認し、必要な届出対応や周知内容の更新を行いましょう。
kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/kihon_shinryo_r08.html)
実地での管理では、届出ファイルを単独で保管するのではなく、「届出控え」「受理状況の確認資料」「最新の勤務表」「電話当番表」「院内掲示の写真またはPDF」「診察券・配布文書の見本」「ホームページ掲載画面の保存」「留守番電話の録音原稿」「電話相談記録様式」を一つの管理フォルダにまとめると、内部点検や個別指導への備えとして有用です。体制整備は一度の届出で終わる業務ではなく、継続的に実態を確認する運用業務として扱うべきです。
時間外対応体制加算3は、夜間に診療した患者だけに付く加算ではありません。届出済みの診療所で再診を行う場合に、施設基準に係る区分に応じて所定点数へ加算するものです。そのため、「夜間受診があった患者だけに加算する」「電話相談を受けた患者だけに加算する」といった運用は制度趣旨と異なります。一方で、初診患者へ加算する、届出前の診療へ遡って算定する、届出体制が失われているのに請求を続けるといった誤りには注意が必要です。
レセプト請求では、電子カルテまたはレセプトコンピュータに、届出済みの加算区分を正しく設定し、再診時に適切に反映されるか確認します。ただし、システムが自動算定する設定であっても、届出状況、職員配置、対応時間、患者周知が継続していることまでを保証するものではありません。請求担当者だけでなく、管理者、医師、看護職員、受付・事務職員が、それぞれの役割を理解している必要があります。
特に注意したいのは、「標榜時間外の夜間の数時間」の設定が曖昧なままになっているケースです。例えば、平日は20時から22時まで対応すると患者へ案内しているのに、実際には当番者が不在となる曜日がある、電話転送設定が解除されている、連絡先の変更が診察券やホームページへ反映されていないといった状況は、体制の継続性を損ないます。月次または四半期ごとに、設定と実働の両面から点検することが望まれます。
確認の基本は、「届出内容どおりに電話がつながるか」「誰が受けるか」「受けられないときに誰が折り返すか」「患者にその方法が届いているか」の4点です。夜間対応を担う職員が、医学的判断を単独で抱え込まないよう、院長または当番医へ連絡する基準、救急要請を勧める症状の例、近隣救急医療機関への案内方法を明文化してください。時間外対応体制加算3は4点という小さな点数に見えても、地域の患者が安心して日常診療を継続するための連絡体制を評価する制度です。請求実務と患者安全を切り離さず、自院の診療機能に見合った持続可能な体制として運用することが、適正算定につながります。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf)