診療報酬改定2026のベースアップ評価料実務

診療報酬改定2026のベースアップ評価料実務

2026年度診療報酬改定で見直されたベースアップ評価料について、制度の目的、点数・対象範囲、届出、賃金改善報告、請求時の注意点を医療従事者向けに整理します。自院で確実に運用できているでしょうか?

診療報酬改定2026 ベースアップ評価料の基礎知識と核心ガイド

2026年改定の実務対応要点
全算定機関で届出直し

2026年6月から算定する場合、従来から算定していた医療機関を含めて、新制度に基づく届出が必要です。

賃上げ実績を継続管理

評価料収入を賃金改善に適切に充て、毎年8月の中間報告・実績報告へつながる記録を残すことが重要です。

届出内容と請求を照合

受理された施設基準の内容とレセプト請求が一致しない事例もあるため、届出区分と請求設定を再確認します。


ベースアップ評価料とは何か、2026年度改定で何が変わったのか


ベースアップ評価料は、医療機関、訪問看護ステーション、保険薬局などが職員の賃金改善を継続的に実施できるよう、診療報酬上で原資を確保する仕組みです。単なる医療機関の収益増を目的とする加算ではなく、診療報酬として受け取った収入を賃金改善へ適切に配分し、その実施状況を報告することを前提としています。2024年度改定で創設された制度ですが、2026年度、すなわち令和8年度診療報酬改定では、賃上げ支援をより強化する方向で点数や対象範囲、届出・報告の運用が見直されました。
実務では、「届出を出せば自動的に職員全員の給与へ一律に上乗せできる制度」と理解しないことが重要です。対象となる職員、賃金改善の方法、算定する評価料の区分、院内の賃金規程や給与計算、会計上の原資管理を連動させる必要があります。管理部門だけの作業にせず、院長・理事長、事務長、人事労務担当、経理担当、看護部門、医事課などが共通認識を持つことが、届出漏れや請求誤り、報告時の差異を減らす基礎になります。
令和8年度改定では、外来・在宅ベースアップ評価料、入院ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料、調剤ベースアップ評価料などについて、制度運用に必要な通知・届出様式が整理されました。さらに、継続して賃上げに取り組む機関を評価する考え方が導入されており、前年までの取組状況や新制度への移行手続が実務上の重要論点となります。厚生労働省は制度専用ページで届出様式、説明資料、動画、疑義解釈を随時更新しているため、院内で保存した古い様式だけに依存せず、提出直前に最新版を確認する運用が必要です。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html)


算定区分・届出対象・実務上の確認事項

2026年度改定のベースアップ評価料は、医療提供の場に応じて複数の区分があります。外来中心の診療所と、入院機能を持つ病院・有床診療所では、確認する評価料や届出様式、必要となるデータの考え方が異なります。また、訪問看護ステーション、保険薬局、歯科技工所に関係する支援料にもそれぞれ専用の取扱いがあります。「自院は診療所だから評価料(Ⅰ)だけ」と早合点せず、外来件数、入院の有無、届出済みの施設基準、職員構成、過去の賃金改善計画を確認して、該当区分を判定してください。
特に注意したいのは、2026年6月から評価料を算定する全ての医療機関等について、過去にベースアップ評価料を届出済みであっても、令和8年度の制度に対応した届出直しが必要とされた点です。既存算定機関が「前年に届出済みなので手続不要」と判断すると、算定継続に影響するおそれがあります。届出後は、受理された区分と電子カルテ・レセコンのマスタ設定、算定対象患者、請求内容を一致させる確認が不可欠です。東海北陸厚生局「ベースアップ評価料等の届出について」
kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/r06baseup.html)

項目 基準・内容 備考
外来・在宅ベースアップ評価料 主として外来・在宅医療を行う医療機関が対象となる評価料。届出内容に応じて評価料(Ⅰ)や(Ⅱ)を確認する。 無床診療所と有床診療所では、必要な確認資料が異なる場合がある。
入院ベースアップ評価料 病院や入院機能を持つ医療機関に関係する評価料。病床や入院患者数などの実績に応じて届出区分を確認する。 外来・在宅評価料との組合せも含めて判定する。
訪問看護ベースアップ評価料 訪問看護ステーション向けの評価料。ステーション専用の届出様式と報告様式を使用する。 医療機関とは別に、訪問看護用資料を確認する。
調剤ベースアップ評価料 保険薬局が賃金改善のために算定する評価料。調剤用の届出様式を用いる。 医科・歯科用の様式を流用しない。
歯科技工所ベースアップ支援料 歯科技工所に関する支援料で、歯科診療所が届出を行う場合の取扱いが定められている。 通常の歯科外来・在宅ベースアップ評価料とは区別して確認する。

届出様式の選択を誤ると、必要な評価料を算定できないだけでなく、その後の実績報告にも影響します。厚生労働省は医療機関用として様式95~100、調剤用として様式103~104などを示しており、令和8年度改定の正式な告示・施設基準通知・算定留意事項通知と併せて確認することが重要です。制度解釈に迷う場合は、自己判断で請求を継続するよりも、所在地を管轄する地方厚生局または都道府県事務所へ確認する体制を整えましょう。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html)


届出から請求開始までに行うべき院内チェック

ベースアップ評価料の届出は、原則として所在地を管轄する地方厚生局または地方厚生支局の都道府県事務所が指定する専用メールアドレスに、所定のExcelファイルを提出して行います。PDF化したもの、ZIPファイル、独自に加工したファイル、パスワードを付けたファイル、クラウドストレージの共有リンクなどは受理対象外とされているため、提出形式の誤りに注意が必要です。メール本文には医療機関名と連絡先を記載し、ファイル名には医療機関コード等を付す運用が案内されています。届出書の作成・提出方法に関する厚生局案内
kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/r06baseup.html)
届出作業を単発の申請事務として終わらせず、請求開始前の点検工程として設計することが大切です。例えば、労務担当が賃金改善計画と対象職員を確認し、経理担当が原資の管理方法を決め、医事課がレセコン設定と算定開始月を確認し、最終的に管理者が届出内容と実際の運用が矛盾していないかを承認する流れです。届出資料のExcel、送信メール、送信記録、受理に関する連絡、賃金改善の算定根拠、給与改定通知、支給実績を同じフォルダ体系で保管すると、後日の報告作成や内部監査でも追跡しやすくなります。

  • 最新の届出様式と手引きをダウンロードし、旧様式を使用していないか確認する
  • 自院の病床状況、外来・入院実績、届出済み施設基準を基に算定区分を判定する
  • 対象職員、賃上げ方法、適用開始日、賞与・手当との整理を人事労務部門と確認する
  • 届出区分とレセコンの算定設定、請求開始月、返戻・査定時の確認担当を対応付ける
  • Excelファイルの改変やPDF化を避け、管轄事務所の指定方法で提出する
  • 提出後は届出内容、送信記録、院内承認資料、賃金改善根拠を一元保管する

2026年度には、届出で受理された評価項目と実際の診療報酬請求内容に疑義が生じる保険医療機関等が見られるとして、厚生労働省から注意喚起も行われています。届出した評価料の区分が正しいかだけでなく、レセプト作成時にその区分以外を請求していないか、改定後のマスタが適用されているか、再届出や区分変更の情報が医事部門へ確実に連携されているかを、月次で照合する仕組みが必要です。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html)


賃金改善と毎年8月の報告をどう管理するか

ベースアップ評価料の運用で最も重要なのは、収入を賃金改善へ適切に充てたことを説明できる状態にしておくことです。評価料を算定している保険医療機関、訪問看護ステーション、保険薬局は、毎年8月にベースアップ評価料に係る報告書の提出が必要です。したがって、届出時に計画を作成した後、給与改定や手当支給を実施するたびに根拠資料を保管し、評価料収入と賃金改善額の推移を確認する必要があります。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html)
令和8・9年度算定分については、令和8年8月に令和8年度算定分の中間報告書、令和9年8月に令和8年度算定分の実績報告書と令和9年度算定分の中間報告書を提出する運用が示されています。中間報告は、制度開始後の実績を早期に確認する重要な機会です。給与の支払月と勤務月、賃金改善の適用月、評価料の請求月、会計上の収入計上月が一致しない場合もあるため、担当者の感覚だけに頼らず、月ごとの管理表で整合性を確認してください。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html)
例えば、6月診療分から評価料を算定し、7月給与から基本給または毎月の手当に賃金改善分を反映させる場合、少なくとも「対象職員一覧」「改定前後の賃金表」「賃金改善の開始日」「各月の評価料収入」「各月の賃金改善支給額」「差額が生じた理由」を記録します。賞与での対応、入退職者の発生、育児休業・休職者の取扱い、常勤・非常勤の雇用形態による配分差なども、院内ルールとして説明できる形にしておくと、報告書作成時の再計算や説明負担を抑えられます。
また、年度途中に届出区分の変更や計画の修正が生じた場合には、単に直近月の数字を合わせるのではなく、当該年度の賃金改善実施期間全体を通じて整理する視点が必要です。厚生労働省は、途中で区分変更や計画修正を行った場合でも、届出を行った年度の賃金改善実施期間全体について、1つの報告書にまとめて報告する必要があると案内しています。人事・経理・医事のデータを月次で突合し、年度末に初めて不整合へ気付く事態を防ぐことが実務上の要点です。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html)


請求漏れ・返戻・不適切運用を防ぐための留意点

ベースアップ評価料は、制度を理解して届出を済ませるだけでは十分ではありません。請求開始後に生じやすい問題には、届出区分とレセコンの設定不一致、旧点数や旧様式の参照、対象外の請求、賃金改善の実績不足、報告書の提出遅延、職員への説明不足などがあります。とりわけ改定直後は、メーカーのマスタ提供時期、院内設定の切替時期、改定情報の伝達遅れによって、意図しない請求漏れや誤請求が起こりやすくなります。
対策としては、月初に請求件数・算定回数・評価料収入を前月や想定値と比較すること、届出書上の評価料区分とレセプト電算処理の設定を照合すること、毎月の給与支給後に賃金改善額を記録することが有効です。小規模診療所でも、院長、事務長、医療事務、税理士・社労士などの外部専門職の役割を明確にすれば、確認負担を分散できます。ただし、外部委託先に任せきりにせず、最終的な届出内容・請求内容・賃金改善の整合性は医療機関側が説明できる状態にしておくべきです。
さらに、制度資料は改定後も訂正、様式更新、疑義解釈の追加が行われます。実際に厚生労働省の特設ページでは、届出様式の更新や、入院診療のみで外来診療がゼロ件の医療機関に関する様式上の注意事項、賃金改善報告書の取扱い、疑義解釈資料などが掲載されています。院内で「改定情報を確認する担当者」「更新情報を医事・労務・経理へ展開する方法」「改訂版ファイルと旧版を区別する保管ルール」を定めることが、継続算定の安全性を高めます。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html)
診療報酬改定2026のベースアップ評価料は、人材確保・定着と医療機関経営をつなぐ制度です。届出を期限内に済ませること、正しい区分で請求すること、評価料収入を賃金改善に反映すること、毎年8月の報告を確実に行うことを一連の業務として管理してください。制度の目的である継続的な賃上げを実現するには、請求部門だけでなく、人事労務、経理、現場管理者が数値と根拠資料を共有する運用が欠かせません。




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