

調剤報酬改定2026とは、令和8年度診療報酬改定における保険薬局・保険薬剤師関係の見直しを指します。診療報酬本体は令和8年度・令和9年度の2年度平均でプラス3.09%、調剤の改定率はプラス0.08%とされ、令和8年6月から施行されました。一方、薬価は令和8年4月にマイナス0.86%改定となっており、薬局経営は「調剤技術料の変化だけでなく、薬剤料、在庫、供給不安対応、人的コスト」を一体で見る必要があります。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
今回の改定の中心は、患者のための薬局ビジョンに沿って、薬局の評価を単なる処方箋受付や門前立地から、地域の医薬品供給拠点としての機能、在宅対応、医療安全、服薬フォロー、多職種連携へ移すことです。従来の地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算、医療DX推進体制整備加算、かかりつけ薬剤師指導料などは、そのままでは残らず、名称・算定要件・評価方法が大きく再設計されました。したがって、旧点数との単純比較だけでなく、「廃止された評価」「新設された評価」「要件強化された評価」「経過措置が設定された評価」を分けて確認することが重要です。
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」
実務では、令和8年6月1日以降に新規開設した薬局か、同年5月31日以前から保険指定を受けている既存薬局かによって、調剤基本料2や門前薬局等立地依存減算の適用関係が異なる場面があります。また、施設基準の届出状況、処方箋集中率の再計算、後発医薬品使用割合、電子処方箋関連体制、在宅実績、勤務・研修体制なども算定可否に関係します。経営シミュレーションを行う際は、レセコンのマスタ更新だけで済ませず、施設基準と実績データの突合を行うことが必要です。
調剤報酬改定2026で特に確認すべき項目を、薬局運営への影響が大きい順に一覧化します。点数だけを見れば増点となる項目もありますが、実際には届出、実績、記録、患者への説明、医療機関・他薬局との連携が前提になります。自薬局が「どの点数を取れるか」ではなく、「どの患者価値を継続的に提供でき、その記録を残せるか」という視点で評価項目を整理する必要があります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 45点から47点へ引上げ | 基本料区分は集中率・受付回数等で判定 |
| 調剤基本料2 | 29点から30点へ引上げ | 都市部の新規開設薬局には集中率85%超などの判定が追加 |
| 調剤基本料3イ | 24点から25点へ引上げ | グループ全体の受付回数と集中率で判定 |
| 調剤基本料3ロ | 19点から20点へ引上げ | 店舗数300以上の判定基準は撤廃 |
| 調剤基本料3ハ | 35点から37点へ引上げ | 面分業の推進を踏まえて評価 |
| 門前薬局等立地依存減算 | 新設、調剤基本料から15点減算 | 都市部の高集中・密集立地等の新規開設薬局が対象 |
| 地域支援・医薬品供給対応体制加算 | 地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算を再編 | 医薬品の安定供給・備蓄・分譲・地域連携を重視 |
| 後発医薬品調剤体制加算 | 廃止 | 後発医薬品使用割合は新体制加算の基礎要件へ移行 |
| バイオ後続品調剤体制加算 | 新設、50点 | 体制届出の薬局でバイオ後続品を調剤した場合 |
| 電子的調剤情報連携体制整備加算 | 新設、月1回8点 | 旧医療DX推進体制整備加算を一本化 |
| 医療情報取得加算 | 廃止 | 電子的調剤情報連携体制整備加算に再編 |
| 調剤ベースアップ評価料 | 新設、処方箋受付1回につき4点 | 賃金改善体制の整備と届出が必要 |
| 調剤物価対応料 | 新設、3月に1回1点 | 令和9年6月以降は2点となる予定 |
| 調剤時残薬調整加算 | 新設、30点または50点 | 残薬確認と処方医の指示下での調剤日数変更を評価 |
| 薬学的有害事象等防止加算 | 新設、30点または50点 | 照会により処方変更が行われた場合を評価 |
| 重複投薬・相互作用等防止加算 | 廃止 | 新設の残薬調整・有害事象防止加算へ再編 |
この一覧では、特に「後発医薬品調剤体制加算の廃止」と「地域支援・医薬品供給対応体制加算への統合」を見落とさないことが重要です。後発医薬品の使用割合だけを追う運用では不十分になり、安定供給のための在庫管理、他薬局への分譲、供給困難時の患者紹介・処方医への照会、適正な卸配送依頼など、地域全体での供給責任を支える仕組みが求められます。
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等」
調剤基本料は、調剤基本料1が47点、調剤基本料2が30点、調剤基本料3イが25点、3ロが20点、3ハが37点となりました。重要なのは、都市部における新規出店と、門前・医療モールへの立地依存に関する評価が厳格化された点です。都市部は特別区および政令指定都市を指し、半径500m以内に他の保険薬局がない地点は除かれます。都市部で令和8年6月1日以降に新規開設した薬局では、月間処方箋受付回数が600回超1,800回以下かつ集中率85%超の場合、調剤基本料2の対象になり得ます。
また、医療モールや医療ビレッジ内で複数の保険医療機関が同一建物内または同一敷地内に存在する場合、処方箋集中率の計算では複数医療機関を1つの医療機関とみなして受付回数を合算します。従来よりも集中率が高く算出される可能性があるため、医療モール隣接薬局では、月次の集中率判定を改定後のルールで再確認することが不可欠です。
さらに、新設された門前薬局等立地依存減算は、所定の施設基準に該当する場合に調剤基本料から15点を減算する仕組みです。例えば、都市部に所在し、半径500m以内に他薬局があり、特定医療機関の処方箋集中率が85%を超え、周辺50m以内に他薬局が複数あるといった条件が対象になります。医療機関と同一敷地内または同一建物内にあり、特定医療機関への集中率が85%を超える薬局も対象となり得ます。ただし、令和8年5月31日時点で保険指定を受けている既存薬局については、当面の間、この減算の施設基準に該当しない経過措置が設けられています。
地域支援・医薬品供給対応体制加算を検討する薬局では、届出時点だけ帳尻を合わせるのではなく、日常の在庫管理記録、分譲実績、供給困難時の対応記録、夜間休日の連絡体制、在宅対応の連携先、研修計画を監査可能な形で整備することが大切です。施設基準を満たしていても、実地指導や個別指導において実運用の説明ができなければ、算定の妥当性は弱くなります。
調剤報酬改定2026では、薬局薬剤師の対人業務を「包括的な資格・属性」で評価する設計から、「患者に実施した具体的な業務と、その結果」に基づく設計へ移行させています。代表例が、かかりつけ薬剤師指導料およびかかりつけ薬剤師包括管理料の廃止です。服薬管理指導料の基本点数は維持しつつ、かかりつけ薬剤師が実施したフォローアップ、患家訪問、残薬調整、薬物療法の包括的評価を別途評価する構造に変わりました。
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は50点で、3月に1回の算定です。直近6か月に外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1または2、調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算のいずれかを算定した患者について、患者または家族の求めに応じ、電話などで継続的な服薬状況・残薬状況の確認と必要な指導を行った場合が対象です。かかりつけ薬剤師訪問加算は230点で、6月に1回算定できます。患家を訪問し、服用薬の管理や残薬状況の確認を実施し、その結果を保険医療機関へ情報提供することが求められます。
調剤時残薬調整加算と薬学的有害事象等防止加算は、それぞれ30点または50点です。前者は、患者・家族からの聴取などにより残薬を確認し、処方医の指示下で7日分以上相当の調剤日数変更を行った場合に評価されます。後者は、薬剤服用歴や電子処方箋の仕組みを活用した重複投薬確認などに基づく照会の結果、処方変更が行われた場合が対象です。単なる疑義照会件数を増やす発想ではなく、残薬、相互作用、過量投与、腎機能・肝機能に応じた用量、患者の服薬能力、生活環境などを統合して、薬物関連問題を予防するための業務として位置付ける必要があります。
在宅では、在宅患者訪問薬剤管理指導料の複数回算定の間隔が「中6日以上」から「週1回」へ見直されました。末期悪性腫瘍、注射による麻薬投与、中心静脈栄養法の対象患者では、服薬管理指導料4のロと合わせて週2回かつ月8回まで算定可能です。また、休日・夜間を含む開局時間外の調剤および訪問薬剤管理指導に対応する連絡体制を整備し、初回訪問時などに患者・家族へ文書で説明することが求められます。
医師と薬剤師の同時訪問を評価する訪問薬剤管理医師同時指導料は150点、行動面の運動興奮などにより複数名訪問の必要性がある患者への複数名薬剤管理指導訪問料は300点で新設されました。さらに、在宅薬学総合体制加算1は15点から30点へ、在宅薬学総合体制加算2は個人宅等の単一建物診療患者・居住者が1人の場合に100点、それ以外の場合に50点へ区分されました。個人宅への訪問実績、麻薬・無菌調製・小児在宅への対応、薬剤師配置、医療材料供給体制など、より高い在宅機能が問われます。
DX関連では、医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算が廃止され、電子的調剤情報連携体制整備加算として月1回8点に一本化されました。電子処方箋の発行・応需、処方・調剤情報の登録や閲覧、重複投与・併用禁忌チェックに対応する体制に加え、算定月の3か月前における件数ベースのマイナ保険証利用率30%以上などの条件を確認します。システム導入だけでなく、情報取得を服薬指導、重複投薬防止、疑義照会、継続フォローに実装して初めて、DXの価値が患者安全へつながります。
調剤報酬改定2026への対応では、点数表の暗記よりも、改定後の要件を業務フロー・記録様式・レセコン設定・職員教育へ落とし込むことが重要です。特に新設加算は、患者への介入が終わった後に記録を補う運用ではなく、対象患者の抽出、実施内容、医師への情報提供、算定タイミング、次回フォローまでを一連の手順として標準化する必要があります。
まず、調剤基本料は、月間処方箋受付回数、特定医療機関または上位3医療機関の集中率、医療モール内医療機関の合算、同一グループの受付回数などを、改定後の定義で再集計します。新規開設薬局では、開局時の事業計画段階から、調剤基本料2の適用や門前薬局等立地依存減算の可能性を検討しなければなりません。既存薬局も、経過措置の対象か、店舗移転・組織変更・開設形態の変更で扱いが変わらないかを、地方厚生局への確認も含めて慎重に判断します。
地域支援・医薬品供給対応体制加算では、後発医薬品使用割合85%以上の確認に加え、安定供給に向けた計画的調達・在庫管理、他薬局への分譲、供給困難時の対応、重要供給確保医薬品の備蓄努力、卸への過度な急配・頻回配送依頼を控える体制を確認します。単に在庫を多く抱えることが正解ではありません。期限切迫・温度逸脱・不動在庫を防ぎながら、地域内連携で供給リスクを下げる在庫管理が必要です。
対人業務では、残薬確認の聴取項目、患者の服薬状況、アドヒアランス低下の背景、副作用疑い、併用薬、検査値、処方医への照会内容、処方変更の結果、患者への説明内容を、薬剤服用歴に一貫して記録します。調剤時残薬調整加算では7日分以上相当の調剤日数変更が基本となる一方、6日分以下の変更では理由を調剤報酬明細書に明記する必要があります。残薬があるという事実だけでは算定の根拠にならず、処方医の指示、変更内容、患者安全上の必要性を明確に残すことが重要です。
最後に、令和8年度の調剤報酬改定では、賃上げ対応のために調剤ベースアップ評価料4点、物価高騰対応として調剤物価対応料1点が新設されています。調剤ベースアップ評価料は、勤務職員の賃金改善を図る体制について施設基準を満たし、地方厚生局へ届出を行うことが必要です。賃上げの原資だけを意識するのではなく、対象職員、賃金改善計画、実績の把握、届出・報告に関する責任者を明確にし、薬局内の労務管理と請求管理を連動させることが求められます。厚生労働省は改定後も疑義解釈資料や訂正通知を順次公表しているため、開設時や届出変更時だけでなく、継続的に公式通知を確認する運用が不可欠です。
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の関係法令・疑義解釈資料」