調剤報酬改定2026で薬局が備える実務対応

調剤報酬改定2026で薬局が備える実務対応

2026年度の調剤報酬改定では、薬局の立地依存から地域・在宅・対人業務への転換が一段と進みます。調剤基本料、地域支援、かかりつけ、残薬対策、DXへの影響を踏まえ、薬局は何を優先して準備すべきでしょうか?

調剤報酬改定2026 薬局の基礎知識と核心ガイド

薬局経営と現場対応の要点整理
地域機能への評価転換

門前立地への依存を抑え、安定供給、在宅対応、地域連携を実証する薬局が評価される改定です。

対人業務は実績管理が重要

残薬調整、処方変更提案、継続フォロー、訪問指導を記録し、算定根拠を残す体制が必要です。

届出と運用を早期に点検

施設基準、電子処方箋、マイナ保険証利用率、賃上げ実績を横断的に確認し、収益変動に備えます。

2026年度改定の全体像と薬局に求められる役割


2026年度、すなわち令和8年度の診療報酬改定は、2026年6月1日に施行されました。診療報酬全体の改定率は2年度平均でプラス3.09%、調剤分野の改定率はプラス0.08%です。ただし、薬局にとって重要なのは平均改定率だけではありません。個々の薬局の収益や業務量は、調剤基本料の区分、加算の届出状況、処方箋集中率、在宅医療の実績、電子的な情報連携体制によって大きく異なります。
今回の調剤報酬改定2026では、いわゆる「門前」や医療モール内の立地に依存した薬局から、地域における医薬品供給拠点として機能する薬局への転換が、より明確に打ち出されました。厚生労働省の資料では、処方箋集中率が85%以上の薬局の割合が2015年の32.5%から2024年には39.3%へ上昇していることが示され、患者本位の医薬分業を進める観点から、立地依存型の評価見直しが行われています。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)
同時に、薬局薬剤師が患者の服薬状況、残薬、重複投薬、有害事象、生活背景を継続的に確認し、処方医や多職種へ情報提供する「対人業務」が報酬上も重視されます。調剤技術を単に薬をそろえる作業として完結させず、薬物療法の成果と安全性を高める実務に接続できるかが、2026年改定後の経営と評価の分かれ目になります。
なお、改定内容を確認する際は、解説記事だけで判断せず、調剤報酬点数表、算定の留意事項通知、施設基準通知、疑義解釈資料を併読することが不可欠です。厚生労働省は改定関連通知、訂正通知、疑義解釈資料を継続して公開しているため、請求前に最新版を確認する運用を定着させましょう。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html)
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」

調剤基本料の見直しと門前薬局等立地依存減算

調剤基本料は、薬局の処方箋受付構造やグループ規模、集中率によって決まる基本的な収益項目です。2026年度改定では、調剤基本料1が45点から47点、調剤基本料2が29点から30点、調剤基本料3イが24点から25点、調剤基本料3ロが19点から20点、調剤基本料3ハが35点から37点へ見直されました。一方、特別調剤基本料Aは5点、特別調剤基本料Bは3点で据え置かれています。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)
特に確認したいのが、都市部における小規模かつ高集中率の新規薬局に対する調剤基本料2の適用と、門前薬局等立地依存減算の新設です。都市部とは原則として特別区および政令指定都市を指し、半径500メートル以内に他の保険薬局がない地点は除外されます。都市部で月600回超1,800回以下かつ処方箋集中率85%超の薬局は、調剤基本料2の対象になり得ます。ただし、2026年5月31日までに開設され、改定後も月1,800回以下で継続する既存薬局には、当面適用しない経過措置があります。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)
また、2026年6月1日以降に新規開設する薬局では、一定の条件に該当すると門前薬局等立地依存減算として調剤基本料から15点が減算されます。対象には、都市部で周辺に薬局が密集し、特定医療機関の処方箋集中率が85%を超える薬局や、同一敷地内または同一建物内の医療機関との関係により集中率が高い薬局が含まれます。既存の保険薬局には当面適用しない扱いですが、今後の出店計画、医療モールへの入居計画、M&A後の新規指定などでは、立地評価を事前に精査する必要があります。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)

項目 基準・内容 備考
調剤基本料1 47点 基本料2・3・特別調剤基本料に該当しない薬局など
調剤基本料2 30点 月間受付回数と85%超の集中率などで判定
調剤基本料3イ 25点 グループ全体で月3.5万回超から40万回以下かつ高集中率など
調剤基本料3ロ 20点 グループ全体で月40万回超かつ高集中率など
調剤基本料3ハ 37点 グループ全体で月40万回超かつ集中率85%以下
門前薬局等立地依存減算 調剤基本料から15点減算 主に2026年6月以降の新規開設薬局が対象

集中率の判定方法も実務上の重要な変更点です。同一建物内または同一敷地内に複数の保険医療機関がある場合、それらを一つの医療機関とみなして処方箋集中率を算出します。従来のように医療モール内の診療科ごとに分散して見える計算ではなくなるため、対象薬局は月次で受付回数と集中率を再集計し、届出区分への影響を確認してください。
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地域支援・医薬品供給対応体制とDXの新評価

2026年度改定では、従来の地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算が再編され、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が設定されました。後発医薬品の使用割合だけで評価するのではなく、医薬品供給不安への対応、在庫管理、他薬局との融通、休日・夜間の対応、在宅連携、医療安全、地域活動といった総合的な薬局機能を評価する枠組みです。
地域支援・医薬品供給対応体制加算1は27点で、医薬品の安定供給体制と、後発医薬品のある先発医薬品および後発医薬品を合算した規格単位数量に占める後発医薬品の数量割合85%以上などが要件です。加算2から5は、調剤基本料1か否かで区分され、地域貢献実績を複数満たすことで37点、59点、67点などが評価されます。従来の加算を取得していた薬局であっても、単に名称変更として扱うのではなく、新たな施設基準と実績要件を点検する必要があります。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)
医薬品供給対応では、計画的な調達・在庫管理、同一グループ以外の薬局への医薬品分譲実績、供給不安時の代替薬局探索や処方医への照会などが求められます。重要供給確保医薬品のうち内用薬・外用薬については、おおむね1か月分の備蓄に努めることも示されています。欠品対応を個人の経験や電話帳に依存せず、在庫照会先、分譲記録、疑義照会の手順、患者説明文例を標準化することが重要です。
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  • 処方箋受付回数、集中率、後発医薬品調剤数量割合を毎月把握する
  • 医薬品分譲、欠品時の照会、処方変更提案の記録様式を統一する
  • 休日・夜間の調剤、在宅、電話相談への対応方法を患者に周知する
  • 在宅訪問、服薬情報提供、多職種会議などの実績を年度単位で集計する
  • 薬局の備蓄品目、医療材料、衛生材料、麻薬対応の体制を確認する

DX関連では、医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算が見直され、電子的調剤情報連携体制整備加算へ一本化されました。月1回8点であり、電子処方箋を発行または応需し、調剤情報を電子処方箋管理サービスへ登録できる体制などが求められます。さらに、算定月の3か月前の件数ベースで、マイナ保険証利用率30%以上が施設基準に含まれます。受付での声掛けだけに任せず、利用率の定期確認、端末操作支援、スタッフ教育、利用できない場合の代替動線まで整備することが現実的です。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)

残薬・かかりつけ・在宅で強まる対人業務の評価

今回の改定では、かかりつけ薬剤師指導料およびかかりつけ薬剤師包括管理料が廃止されました。その代わりに、患者に対して実施した継続的なフォロー、残薬調整、訪問、薬物療法の包括的評価といった行為ごとに評価を振り向ける設計へ転換しています。患者との同意や継続管理の仕組みは引き続き重要ですが、「かかりつけ」を名乗ること自体ではなく、具体的な実務と記録が問われます。
服薬管理指導料では、原則3か月以内に再度処方箋を持参し、手帳を提示した患者への指導は45点、それ以外の患者への指導は59点です。かかりつけ薬剤師が実施する場合でも基本点数は同じですが、要件を満たして実施したフォローアップや訪問には別の加算が設けられています。かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は50点で3か月に1回、かかりつけ薬剤師訪問加算は230点で6か月に1回です。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は、外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1または2、調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算を算定した患者に対して、次回受診までの間に電話などで服薬状況や残薬状況を継続確認し、必要な指導を行った場合に算定します。単発の電話実施だけでなく、対象患者の抽出、連絡時期、聴取項目、薬歴記載、必要時の医療機関への情報提供までを一連の業務として設計しましょう。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)
残薬対策では、調剤時残薬調整加算が新設されました。患者や家族から残薬を確認し、処方医の指示の下で7日分以上相当の調剤日数変更を行った場合、通常は30点、在宅患者やかかりつけ薬剤師が実施する場合などは50点です。残薬があるという申告だけでは不十分であり、残薬の内容、発生原因、処方医への照会、調整内容、患者への説明を薬歴と必要書類に具体的に残す必要があります。
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さらに、残薬以外の重複投薬、相互作用、禁忌、投与量、検査値、患者状態などを確認し、処方医への照会によって処方変更に至った場合には、薬学的有害事象等防止加算が新設されました。通常30点、在宅患者またはかかりつけ薬剤師による実施などでは50点です。従来の重複投薬・相互作用等防止加算および在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は廃止されるため、レセコン設定、薬歴テンプレート、疑義照会区分、算定監査ルールを改定後の名称と要件に更新する必要があります。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)

調剤管理料・在宅医療・賃上げ対応の実務チェック

調剤管理料は、内服薬について従来の投与日数4区分から、27日分以下と28日分以上の2区分へ整理されました。改定後は、27日分以下が1剤につき10点、28日分以上の長期処方が1剤につき60点です。15日分から27日分の処方では旧体系より点数が低下するため、処方日数の構成を把握しないまま月次収益だけを見ていると、減収理由を誤認するおそれがあります。調剤管理加算は廃止されました。
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在宅分野では、在宅薬学総合体制加算1が15点から30点へ引き上げられました。在宅薬学総合体制加算2は、単一建物診療患者または単一建物居住者が1人である個人宅等の場合を「イ」として100点、それ以外を「ロ」として50点に区分しています。個人宅への訪問実績、夜間・休日を含む対応、医療材料・衛生材料の供給、麻薬小売業者免許、在宅研修、多職種連携など、求められる基盤は広範です。高い点数だけに着目せず、自局の訪問エリア、人員、車両、緊急対応、連携先を踏まえて持続可能な体制を設計してください。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)
在宅患者訪問薬剤管理指導料では、月2回以上算定する場合の間隔が「中6日以上」から「週1回」に見直されました。また、薬局または在宅協力薬局との連携により、休日・夜間を含む開局時間外にも調剤および訪問薬剤管理指導に対応できる連絡体制を整え、初回訪問時などに患者・家族へ文書で説明・交付することが求められます。訪問先に連絡先だけを渡すのではなく、緊急時の判断、担当者へのエスカレーション、協力薬局への引継ぎ、折り返し対応の記録まで含めて運用を確認しましょう。
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新設項目として、在宅患者に医師と薬剤師が同時訪問して薬学的管理・指導を行う訪問薬剤管理医師同時指導料150点、行動面の運動興奮などにより複数名訪問が必要な患者に対する複数名薬剤管理指導訪問料300点も設けられました。いずれも単に人員を増やした訪問を評価するものではなく、対象患者、患者同意、医師の判断、実施内容などの条件を満たす必要があります。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf)
賃上げ・物価対応では、届出を行った薬局が処方箋受付1回につき算定できる調剤ベースアップ評価料4点が新設され、令和9年6月以降は8点となる予定です。調剤物価対応料は患者ごとに3か月に1回1点で、令和9年6月以降は2点となる予定です。ベースアップ評価料は、勤務職員の賃金改善のための体制整備と届出が前提であるため、経営者、管理薬剤師、労務担当者、会計担当者が別々に扱わず、賃金改善計画、支給実績、届出内容、レセプト算定を突合することが大切です。
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調剤報酬改定2026に対応する薬局の優先順位は明確です。第一に、調剤基本料区分と集中率を再確認すること。第二に、地域支援・医薬品供給対応体制加算、DX加算、在宅加算、ベースアップ評価料の届出可否を点検すること。第三に、残薬調整、疑義照会、フォローアップ、訪問指導を算定要件に沿って記録できる業務フローを作ることです。報酬を目的化するのではなく、地域で必要とされる薬物療法支援を可視化し、その実績を適切に評価へ結び付けることが、改定後の薬局に求められる実務といえるでしょう。




2026年度診療報酬改定対応 「重症度、医療・看護必要度」解説書