

「ヨーデル便秘薬」は、医療用医薬品であるヨーデルS糖衣錠-80を指して検索されることが多い名称です。本剤は藤本製薬が製造販売する便秘治療剤で、有効成分はセンナエキスです。1錠中にセンナエキス80mgを含有し、センノシドAとして16mgに相当します。センナ由来成分を用いる大腸刺激性下剤として位置付けられ、効能又は効果は便秘症です。
センノシド類は上部消化管では大きく吸収されず、腸内細菌の作用を受けて代謝され、大腸の運動および水・電解質の腸管内への移行に影響します。その結果、結腸の蠕動が促され、便の排出が起こりやすくなります。直腸性便秘や一時的な排便困難への対症療法として有用となり得る一方、便秘の原因そのものを是正する薬剤ではありません。薬剤性便秘、器質的疾患、排便障害型便秘、代謝・内分泌異常などを見逃さない視点が重要です。
刺激性下剤は速やかな排便効果が期待される反面、腹痛、便意切迫、下痢が起こり得ます。したがって、「排便がない」という事実だけで増量を判断せず、便形状、排便時のいきみ、腹部膨満、腹痛、食事・水分摂取、活動性、併用薬、直近の排便回数を総合して評価します。とくに高齢者、フレイル患者、経口摂取量が低下している患者では、下痢から脱水や電解質異常につながるリスクを個別に見積もる必要があります。
PMDA 医療用医薬品情報:ヨーデルS糖衣錠-80
電子添文上、通常成人ではセンナエキスとして1回80mgを就寝前に経口投与します。ヨーデルS糖衣錠-80では原則として1回1錠に相当します。高度の便秘では1回160~240mgまでを頓用として投与でき、製剤換算では2~3錠です。連用する場合は1回40~80mgを毎食後に投与します。小児では6~12歳に限り、1回40mgを就寝前に投与する用法が示されています。
ただし、添付文書に記載された最大用量は、機械的に使うべき目標量ではありません。高用量の頓用が必要となる背景には、糞便貯留、便塊の硬結、摂取不足、活動量低下、オピオイドや抗コリン作用をもつ薬剤など、別途介入すべき要因が潜んでいる可能性があります。排便が得られない場合には、安易な追加投与ではなく、腸閉塞・糞便塞栓・直腸内便塊、腹部症状の急変の有無を確認します。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 有効成分 | 1錠中センナエキス80mg | センノシドAとして16mgに相当 |
| 通常成人用量 | 1回80mgを就寝前に経口投与 | 本剤では通常1回1錠 |
| 高度の便秘 | 1回160~240mgまでを頓用 | 本剤では2~3錠に相当 |
| 連用時 | 1回40~80mgを毎食後に経口投与 | 漫然投与を避け、継続必要性を定期評価 |
| 小児 | 6~12歳は1回40mgを就寝前に投与 | 対象年齢と投与根拠を確認する |
服薬支援では、就寝前投与の意図、予想される排便タイミングには個人差があること、腹痛や水様便が続く場合には自己判断で追加服用しないことを説明します。介護施設や在宅療養では、頓用指示の運用が過量投与につながらないよう、最終排便日だけでなく便性状、腹部所見、直腸診の必要性、食事・水分量を記録に反映することが実践的です。
くすりのしおり:ヨーデルS糖衣錠-80
ヨーデルS糖衣錠-80は、急性腹症が疑われる患者、痙攣性便秘の患者、重症の硬結便がある患者には投与しません。急性腹症や腸閉塞などが疑われる場面で腸管蠕動を亢進させると、腹痛などの症状を悪化させるおそれがあります。また、重症の硬結便では経口下剤だけでは十分な効果が得られず、腹痛を増悪させる可能性があるため、直腸診、浣腸、摘便を含む適切な評価と対応を優先します。
副作用としては、腹痛、下痢、悪心・嘔吐、腹部不快感などの消化器症状に注意します。強い下痢が持続すれば、脱水や電解質異常を介し、全身状態の悪化につながり得ます。高齢者、腎機能低下例、利尿薬併用例、低栄養例、心不全など水分・電解質バランスが崩れやすい患者では、体重変化、血圧、食事・飲水量、尿量、血清カリウムなどを臨床状況に応じて確認します。
なお、センナ製剤を含む刺激性下剤は、長期にわたり漫然と使用するのではなく、症状、生活背景、原因薬の調整、便秘の病型に応じて治療全体を組み直すことが重要です。便秘を訴える患者が「効かないから増やしたい」と希望する場合も、まず糞便性状と排便障害の有無を把握し、薬剤の選択・投与タイミング・他剤併用の妥当性を検討します。
ヨーデルS糖衣錠-80の処方時には、便秘を引き起こしている薬剤、下痢による有害事象を増幅し得る薬剤、電解質異常が問題となりやすい薬剤を確認します。便秘原因薬としては、オピオイド鎮痛薬、抗コリン作用をもつ薬剤、三環系抗うつ薬、抗精神病薬、カルシウム拮抗薬、鉄剤、カルシウム製剤、アルミニウム含有制酸薬などが代表的です。原因薬の中止・減量・変更が可能かを検討せず、刺激性下剤だけを追加する運用は避けるべきです。
また、利尿薬、副腎皮質ステロイド、ジゴキシンなどを使用している患者では、下痢を契機とする低カリウム血症や循環血漿量低下が治療上の問題になり得ます。併用の可否を単純に判断するのではなく、年齢、腎機能、心機能、食事・水分摂取量、下剤使用頻度、採血値、転倒リスクを含めて個別評価します。
慢性便秘症の治療では、便秘の病態に応じて、浸透圧性下剤、上皮機能変容薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬、消化管運動促進薬、直腸処置などを組み合わせる選択肢があります。ヨーデルを使用していたという情報だけで同じ作用機序の薬へ一律に置き換えるのではなく、硬便優位か、排便回数減少型か、排出障害が疑われるか、オピオイド誘発性便秘かを再確認して、治療目的に合う代替策を選びます。
例えば、便が硬く水分不足が主体の患者では、刺激性下剤の増量よりも、飲水・食事内容・活動性を確認したうえで便を軟化させる治療の適否を検討します。一方、短期的に排便を促す必要があり、禁忌に該当せず、腹部所見にも問題がない患者では、刺激性下剤を限定的に使う判断があり得ます。重要なのは「毎日排便させること」そのものではなく、患者の苦痛、便性状、排便困難、生活への影響、有害事象を踏まえた個別目標を共有することです。
藤本製薬は2026年4月2日付で、ヨーデルS糖衣錠-80の販売中止を案内しています。公表情報では、PTP3000錠包装について在庫消尽後に販売中止となり、実施予定日は2027年3月1日とされています。供給・流通在庫には地域、卸、医療機関・薬局ごとの差があり得るため、処方の継続可否は個別の採用状況と在庫を確認して判断します。
切替対応では、まず対象患者を抽出し、処方日数、残薬、頓用か定期か、直近の排便状況、ヨーデル導入時の目的、過去に試した下剤と反応、有害事象歴を確認します。そのうえで、処方医、薬剤師、看護師、施設スタッフが情報を共有し、急な薬剤変更による排便コントロールの乱れを防ぎます。特に施設入所者や在宅患者では、処方だけを変更して観察・記録の方法が変わらないと、効果不十分や下痢の発見が遅れるため注意が必要です。
代替薬の候補は、同成分・同効薬の採用状況だけでなく、患者の便秘病態、腎機能、嚥下機能、服薬アドヒアランス、費用、剤形の受容性、介助体制を踏まえて選定します。切替後は、少なくとも排便回数、便性状、腹痛、下痢、失禁、食事量、必要に応じて電解質を確認し、初期用量が患者に適合しているか評価します。販売中止の情報を契機に、長期間固定化された下剤レジメンを見直し、患者ごとに最小限で安全な便秘管理へ再設計することが求められます。
藤本製薬:医療関係者向け製品情報・販売中止のお知らせ