水分・血漿成分を補う薬

水分・血漿成分を補う薬

水分・血漿成分を補う薬は、脱水、出血、電解質の不足、循環血液量の低下などに対し、体液の量や組成を整える目的で用いる注射薬です。病院や救急医療の場では「点滴」と総称されることがありますが、中身と目的は同じではありません。水分補給、ナトリウムや

水分・血漿成分を補う薬


水分・血漿成分を補う薬は、脱水、出血、電解質の不足、循環血液量の低下などに対し、体液の量や組成を整える目的で用いる注射薬です。病院や救急医療の場では「点滴」と総称されることがありますが、中身と目的は同じではありません。水分補給、ナトリウムやカリウムなどの電解質補正、循環の維持、栄養補給、薬剤を溶かす目的などで使い分けられます。


輸液は体重や脱水の程度だけで機械的に選ぶものではなく、血圧、尿量、心臓・腎臓・肝臓の機能、血液検査、出血の有無、酸塩基平衡、経口摂取の可否などをもとに医療者が判断します。自宅での水分摂取と、医療機関で行う静脈内補液・輸血は役割が異なります。





種類 成分の例 用途と役割
生理食塩液 塩化ナトリウム 細胞外液欠乏、ナトリウム・クロール欠乏時の補充、注射剤の溶解・希釈などに用いる
細胞外液補充液 乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液 脱水や循環血液量低下で、細胞外液を補う目的で用いる
ブドウ糖注射液 ブドウ糖 水分と糖質の補給、低血糖時の対応など、濃度・製剤ごとの目的で用いる
電解質補正薬 塩化カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸塩製剤 検査で確認されたカリウム、マグネシウム、リンなどの不足を補正する
アルブミン製剤 人血清アルブミン 低アルブミン血症、循環血漿量の減少など、承認された適応で血漿成分を補う
血液製剤 赤血球製剤、血小板製剤、新鮮凍結血漿 出血や造血低下などで不足した血液成分を補う。輸血が必要かは検査と臨床状態で判断する


「水分を入れる」輸液の違い


生理食塩液は、細胞外液とほぼ等張の塩化ナトリウム液です。電子添文では、細胞外液欠乏時、ナトリウム欠乏時、クロール欠乏時、注射剤の溶解希釈剤が効能又は効果として示されています。外科手術などで水・電解質が不足した脱水時に、有効細胞外液量を保ち循環機能を安定させる目的で用いられることがあります。生理食塩液の添付文書情報


リンゲル液も細胞外液補充に使われますが、ナトリウムとクロールだけでなく、カリウム、カルシウム、緩衝に関わる成分などを含む製剤があります。乳酸、酢酸、重炭酸のいずれを含むか、電解質組成、浸透圧、患者の病態によって使い分けが検討されます。日本臨床栄養代謝学会は、細胞外液補充液として生理食塩液、リンゲル液、乳酸・酢酸・重炭酸リンゲル液を挙げています。日本臨床栄養代謝学会「静脈栄養:水・電解質輸液、電解質製剤」


血漿成分・血液成分を補う治療


アルブミン製剤は、栄養状態をよくする目的だけで漫然と使う製剤ではありません。肝硬変に伴う腹水・肝性浮腫、出血性ショックなど、製剤ごとに定められた適応と使用場面があります。体内に水分を引き込む性質があるため、心不全や腎機能低下などでは循環への負担にも注意が必要です。


赤血球、血小板、血漿を補う輸血は、失血、造血の低下、凝固因子の不足などに対して行われます。赤血球製剤は主に酸素を運ぶ能力の補充、血小板製剤は出血傾向への対応、血漿製剤は凝固因子の補充という役割があります。貧血や出血があるからといって、すべての場合で同じ血液製剤を使うわけではありません。


安全に使うための注意点


  • 心不全、腎不全、肝硬変などでは、輸液量が多すぎるとむくみや呼吸状態の悪化につながることがあります。

  • カリウム製剤などは、不整脈を含む重大な問題につながるおそれがあるため、濃度、投与経路、速度、血液検査を厳密に管理して用いられます。

  • 急な体重増加、足のむくみ、息苦しさ、尿量の低下は、体液バランスの変化を示すことがあります。

  • 輸血では、発熱、悪寒、発疹、息苦しさ、血圧低下などの輸血副反応に注意し、異常時には直ちに医療者が対応します。

  • 輸液は薬剤の溶解・希釈目的にも使われますが、混合できる薬や配合の可否は製剤ごとに異なります。


参考情報:PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」


参考情報:日本赤十字社「輸血用血液製剤」