出血を抑え凝固因子を補う薬

出血を抑え凝固因子を補う薬

出血を抑え凝固因子を補う薬は、出血時の止血を助ける薬、血液を固める働きに必要な凝固因子を補う薬、抗凝固薬による作用を中和する薬などを含みます。外傷や手術に伴う出血、血友病などの先天性凝固因子欠乏症、肝疾患や薬剤の影響による出血傾向などで、原

出血を抑え凝固因子を補う薬は、出血時の止血を助ける薬、血液を固める働きに必要な凝固因子を補う薬、抗凝固薬による作用を中和する薬などを含みます。外傷や手術に伴う出血、血友病などの先天性凝固因子欠乏症、肝疾患や薬剤の影響による出血傾向などで、原因に応じて選ばれます。


「血を止める薬」は一括りにはできません。血小板、凝固因子、フィブリン、線溶系のどこに問題があるかで治療は異なり、誤った治療は血栓症や出血の悪化につながる可能性があります。用途は製品ごとに異なるため、代表成分を見ても自己判断で代用・併用しないことが重要です。


主な種類と代表成分





種類 成分の例 用途と役割
抗線溶薬 トラネキサム酸 全身・局所の線溶亢進が関与する出血傾向や異常出血の抑制に用いられる
ビタミンK製剤 メナテトレノン ビタミンK欠乏による出血傾向の改善、ワルファリン投与時の対応など製剤ごとの用途がある
第VIII因子製剤 エフモロクトコグ アルファ 血友病A患者の出血傾向の抑制に用いられる
第IX因子製剤 ノナコグ ベータ ペゴル 血友病B患者の出血傾向の抑制に用いられる
バイパス止血製剤 エプタコグ アルファ インヒビター保有血友病患者などの出血時の止血管理に用いられる
von Willebrand因子製剤 ボニコグ アルファ von Willebrand病患者の出血傾向の抑制に用いられる
抗凝固薬中和薬 イダルシズマブ ダビガトラン投与中に、緊急の中和が必要な出血または緊急処置時に用いられる


止血の仕組みと薬の役割


出血した際には、まず血小板が傷ついた血管に集まり、次に凝固因子が連鎖的に働いてフィブリンの網目を作り、血の塊を安定させます。その後、傷が修復される過程で血栓を分解する線溶系が働きます。出血を抑える薬は、この複数の段階のどこを補うか、あるいはどこを抑えるかによって役割が違います。


トラネキサム酸は、血栓を分解する線溶の働きを抑える抗線溶薬です。全身または局所の線溶亢進が関与する出血傾向で用いられますが、血栓症の危険を考慮する必要がある場合があります。出血があることだけを理由に、原因を確認せず使用する薬ではありません。


凝固因子を補う治療


血友病Aでは第VIII因子、血友病Bでは第IX因子が不足または働きにくくなり、出血が止まりにくくなります。凝固因子製剤は、欠けている因子を補うことで止血機能を支えます。近年は、半減期を延長した製剤や、異なる仕組みで止血を補助する薬もありますが、適応や対象は製品ごとに限られます。


インヒビターと呼ばれる抗体ができ、通常の凝固因子製剤が効きにくい場合には、エプタコグ アルファなどのバイパス止血製剤が選択されることがあります。これらは専門施設での管理が重要で、出血の程度、手術の有無、血栓症のリスクなどを踏まえて使用されます。


抗凝固薬を中和する治療


抗凝固薬を使用中の人で、生命に関わる出血や緊急手術が必要になった場合には、抗凝固作用を中和する治療が検討されます。イダルシズマブは、直接トロンビン阻害薬であるダビガトランの作用を特異的に中和する薬です。すべての抗凝固薬に共通して使える薬ではなく、使用中の成分を正確に確認する必要があります。


ワルファリンに関連する出血では、ビタミンK製剤や凝固因子を含む製剤が検討されることがあります。救急時に備え、抗凝固薬・抗血小板薬を使用している場合は、薬の名前をお薬手帳などに記録しておくことが重要です。


注意したいこと


  • 止まらない出血、吐血、黒い便、血尿、急な強い頭痛、意識の変化、息苦しさを伴う出血は緊急対応が必要です。

  • トラネキサム酸などの止血薬は、血栓症のある人や血栓リスクが高い人では慎重な判断が必要な場合があります。

  • 凝固因子製剤やバイパス止血製剤では、アレルギー反応や血栓塞栓症に注意が必要です。

  • 抗凝固薬を使用中に出血があっても、自己判断で服薬を中止・再開すると血栓症の危険が変化します。必ず医療機関へ連絡してください。

  • 鼻血、月経量の変化、歯肉出血、あざの増加なども、薬の影響や血液疾患の手掛かりになることがあります。続く場合は相談しましょう。


参考情報


PMDA 医療用医薬品情報検索(止血薬・血液凝固因子製剤の電子添文)


日本血栓止血学会