消化・消化管運動・便通を調整する薬

消化・消化管運動・便通を調整する薬

消化器の薬には、胃酸を抑える薬、胃や腸の動きを整える薬、便の水分量や腸管の分泌を変えて排便を助ける薬などがあります。胸やけ、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、慢性便秘症などで使われますが、同じ「胃薬」「便秘薬」でも、原因や病態によ

消化・消化管運動・便通を調整する薬


消化器の薬には、胃酸を抑える薬、胃や腸の動きを整える薬、便の水分量や腸管の分泌を変えて排便を助ける薬などがあります。胸やけ、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、慢性便秘症などで使われますが、同じ「胃薬」「便秘薬」でも、原因や病態によって役割は大きく異なります。


薬は症状だけで自己判断して選ぶものではありません。黒い便、吐血、急な強い腹痛、持続する嘔吐、体重減少、血便などがある場合は、重大な消化器疾患が隠れていることがあるため、早めに医療機関へ相談することが重要です。


主な種類と成分例





種類 成分の例 用途と役割
胃酸分泌抑制薬 ボノプラザンフマル酸塩、ランソプラゾール、ファモチジン 胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などで胃酸を抑え、粘膜の治癒や症状の改善を助ける
消化管運動機能改善薬 アコチアミド塩酸塩水和物、モサプリドクエン酸塩水和物 機能性ディスペプシアなどで、胃の受け入れや排出、消化管運動の調整を目的に用いる
浸透圧性下剤 酸化マグネシウム、マクロゴール4000、ラクツロース 腸内に水分を保ち、便を軟らかくして排便しやすくする
上皮機能変容薬 ルビプロストン、リナクロチド 腸管での水分分泌などに働きかけ、慢性便秘症の排便を改善する
胆汁酸トランスポーター阻害薬 エロビキシバット水和物 胆汁酸の大腸への流入を増やし、結腸運動と水分分泌を促して慢性便秘症を改善する
刺激性下剤 センノシド、ピコスルファートナトリウム水和物 大腸を刺激して排便を促す。頓用を含め、使用目的や継続の必要性を医療者が判断する


働きの違い


胃酸分泌抑制薬は、胃酸による粘膜障害を抑える薬です。カリウムイオン競合型アシッドブロッカーであるボノプラザンと、プロトンポンプ阻害薬であるランソプラゾールは、ともに胃酸分泌を強く抑えますが、作用する仕組みは異なります。ファモチジンはヒスタミンH2受容体を遮断して胃酸分泌を抑える薬です。


胃もたれや食後の膨満感では、胃の運動や胃の受け入れ機能の異常が関係することがあります。アコチアミドは機能性ディスペプシアのうち、食後膨満感、早期満腹感、上腹部膨満感を対象とする薬です。一方、モサプリドは消化管運動に関わるセロトニン受容体に作用し、胃腸の動きを整える薬として用いられます。


便秘治療薬は、便を軟らかくする薬、腸の分泌を変える薬、胆汁酸を介して結腸を刺激する薬、大腸を直接刺激する薬に分けて考えると理解しやすくなります。慢性便秘症では、便の硬さ、排便回数、いきみ、残便感、便が出口で出にくいことなどを評価し、病態に応じた治療が検討されます。慢性便秘症の診療では、生活習慣や食事の評価に加え、浸透圧性下剤、上皮機能変容薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬などが選択肢になります。Minds:便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症


剤形と使い分けの考え方


胃酸を抑える薬や消化管運動機能改善薬には、主に錠剤、口腔内崩壊錠、細粒などがあります。便秘薬には内服薬のほか、坐剤や浣腸のように直腸から使う剤形もあります。剤形は、飲み込みやすさ、症状が出る時間帯、速やかな排便補助が必要かどうかなどを踏まえて選ばれます。


ただし、便秘の治療では「強く効く薬を続ければよい」とは限りません。刺激性下剤や直腸から使う薬は、状況に応じて用いられますが、長期の使い方を含めて医師・薬剤師と確認することが大切です。腸閉塞や急性腹症が疑われる場合には、下剤の使用が適さないことがあります。


注意したいこと


  • 胃酸分泌抑制薬は、治療対象によって投与期間や併用薬への注意が異なるため、処方された目的を確認します。

  • 酸化マグネシウムなどは、腎機能が低下している人で高マグネシウム血症に注意が必要です。

  • ルビプロストンでは悪心、リナクロチドでは下痢などが問題となることがあります。

  • 下痢、腹痛、便の性状変化は薬剤による場合だけでなく、原疾患や別の病気による場合もあります。

  • 各成分の適応は製品ごとに異なります。実際に使う薬の添付文書にある効能又は効果、禁忌、併用注意を確認します。


参考情報


PMDA:医療用医薬品情報検索(電子添文・効能又は効果・安全性情報)


公益財団法人日本医療機能評価機構 Minds:便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症