骨形成と骨吸収を調整する薬

骨形成と骨吸収を調整する薬

骨は古くなった骨を壊す骨吸収と、新しい骨を作る骨形成を繰り返して保たれています。骨粗鬆症では、このバランスが崩れて骨が弱くなり、背骨、股関節、手首などの骨折を起こしやすくなります。治療薬は、骨吸収を抑える薬、骨形成を促す薬、骨代謝に必要なカ

骨形成と骨吸収を調整する薬


骨は古くなった骨を壊す骨吸収と、新しい骨を作る骨形成を繰り返して保たれています。骨粗鬆症では、このバランスが崩れて骨が弱くなり、背骨、股関節、手首などの骨折を起こしやすくなります。治療薬は、骨吸収を抑える薬、骨形成を促す薬、骨代謝に必要なカルシウムやビタミンDの働きを補助する薬に分けられます。


骨粗鬆症は骨密度だけでなく、脆弱性骨折の既往、年齢、閉経、ステロイド使用、腎機能、転倒リスク、他の病気などを踏まえて評価されます。腰痛や背中の痛み、身長の低下は圧迫骨折の手がかりになることもありますが、症状だけで診断はできません。


主な種類と成分例





種類 成分の例 用途と役割
ビスホスホネート製剤 アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物 破骨細胞による骨吸収を抑え、骨粗鬆症などで骨折リスクの低減を目指す
抗RANKL抗体製剤 デノスマブ 破骨細胞の形成・活性化に関わるRANKLを抑え、骨吸収を抑制する
選択的エストロゲン受容体モジュレーター ラロキシフェン塩酸塩、バゼドキシフェン酢酸塩 骨ではエストロゲン様に働き、閉経後骨粗鬆症などに用いる
副甲状腺ホルモン関連製剤 テリパラチド、アバロパラチド酢酸塩 骨形成を促す方向に働き、骨折リスクが高い骨粗鬆症などで用いる
抗スクレロスチン抗体製剤 ロモソズマブ 骨形成を促しつつ骨吸収を抑える作用を持ち、骨折リスクの高い骨粗鬆症に用いる
活性型ビタミンD製剤 エルデカルシトール、アルファカルシドール カルシウム代謝と骨代謝を調整し、骨粗鬆症などで用いる製剤がある


骨吸収を抑える薬


ビスホスホネート製剤は骨に取り込まれ、骨を壊す破骨細胞の働きを抑える薬です。アレンドロン酸は国内で骨粗鬆症に対して承認されており、電子添文にも効能又は効果として「骨粗鬆症」が示されています。PMDA:アレンドロン酸錠 電子添文 製剤によっては骨ページェット病など、骨粗鬆症とは別の用途を持つものもあります。


デノスマブはRANKLを標的とする抗体製剤で、破骨細胞の形成・機能に関わるシグナルを抑えます。骨粗鬆症に用いる低用量の製剤と、がんの骨転移や骨病変に関する用途を持つ製剤では、目的や管理方法が異なります。成分名だけで用途を判断せず、製品単位で確認することが必要です。


ラロキシフェンやバゼドキシフェンは、組織によって異なるエストロゲン受容体作用を示す薬です。骨では骨量維持に関係する一方、静脈血栓塞栓症などへの注意が必要であり、すべての人に適する薬ではありません。


骨形成を促す薬


テリパラチドやアバロパラチドは、副甲状腺ホルモンに関連する仕組みを利用して骨形成を促す薬です。骨折リスクが高い骨粗鬆症などで検討され、使用期間や治療後の薬剤選択にも計画性が求められます。これらは骨吸収抑制薬とは異なり、骨を作る働きを高めることに重点を置く薬です。


ロモソズマブは、骨形成を抑える働きを持つスクレロスチンを標的とする抗体製剤です。骨形成を促すとともに、骨吸収も抑える作用を示します。心血管系の病気の既往やリスクを確認したうえで使われる薬であり、開始前と治療中に適切な評価が必要です。


カルシウム・ビタミンDとの関係


骨代謝薬の治療では、カルシウムやビタミンDの不足を確認することがあります。活性型ビタミンD製剤は、腸管からのカルシウム吸収や骨代謝に関わりますが、血中カルシウムが高くなりすぎる危険もあるため、検査を行いながら使われます。カルシウムやサプリメントを追加するかどうかも、食事内容、腎機能、結石の既往、血液検査などにより異なります。


骨粗鬆症の治療では、薬物療法とともに、転倒を防ぐ住環境の整備、視力の確認、筋力・バランスの維持、栄養状態の評価も重要です。ただし、運動内容は骨折の有無や関節・心臓の状態によって個別に検討されます。


剤形と使い分けの考え方


骨粗鬆症治療薬には、毎日または一定間隔で飲む内服薬、皮下注射、静脈内注射があります。ビスホスホネート製剤では、食道への刺激を避けるため服用方法に特別な注意を要する製剤があります。注射薬では、通院頻度、腎機能、低カルシウム血症の危険、自己注射の可否などが選択に関係します。


薬の選択は、骨折リスク、骨密度、年齢、性別、腎機能、がん治療歴、口腔内の状態、継続しやすさを踏まえて行われます。歯科処置を予定している場合は、骨吸収抑制薬の使用歴を歯科医師へ伝えることが重要です。


注意したいこと


  • ビスホスホネート製剤では、食道障害、低カルシウム血症、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折などに注意が必要です。

  • デノスマブの中止・延期は骨代謝に影響することがあるため、予定を自己判断で変更しません。

  • ロモソズマブでは、心血管イベントの既往や危険因子を治療前に確認します。

  • 活性型ビタミンD製剤では、高カルシウム血症や腎機能への影響を確認する必要があります。

  • ここに挙げた成分の承認用途、使用条件、禁忌は製品ごとに異なります。


参考情報


PMDA:医療用医薬品情報検索(電子添文・効能又は効果・安全性情報)


PMDA:アレンドロン酸錠 電子添文(効能又は効果:骨粗鬆症)


一般社団法人日本骨粗鬆症学会:骨粗鬆症診療ガイドライン・学術情報