

糖尿病の薬は、インスリンの分泌を促す、肝臓から糖が出るのを抑える、筋肉や脂肪組織で糖を利用しやすくする、腎臓での糖の再吸収を抑える、食後の血糖上昇をゆるやかにする、あるいはインスリンそのものを補う、といった異なる仕組みで血糖を管理します。
薬の選択では、糖尿病の病型、血糖値だけでなく、低血糖の危険性、体重、心不全・慢性腎臓病・動脈硬化性疾患の有無、腎機能、食事や生活の状況、本人の治療目標などを総合的に考えます。糖尿病診療ガイドライン2024では、血糖降下薬による治療とインスリンによる治療が独立した章として整理されています。日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024
| 種類 | 成分の例 | 用途と役割 |
|---|---|---|
| ビグアナイド薬 | メトホルミン塩酸塩 | 主に肝臓での糖新生を抑え、2型糖尿病の血糖管理に用いる |
| DPP-4阻害薬 | シタグリプチンリン酸塩水和物、リナグリプチン | インクレチンの作用を高め、血糖に応じたインスリン分泌などを助ける |
| GLP-1受容体作動薬 | セマグルチド、デュラグルチド | インクレチン作用を補い、2型糖尿病の血糖管理に用いる注射薬または内服薬がある |
| SGLT2阻害薬 | エンパグリフロジン、ダパグリフロジン | 腎臓での糖再吸収を抑え、尿中へ糖を排出して血糖を下げる |
| スルホニルウレア薬・速効型分泌促進薬 | グリメピリド、レパグリニド | 膵臓からのインスリン分泌を促し、血糖を下げる |
| インスリン製剤 | インスリン リスプロ、インスリン アスパルト、インスリン グラルギン | 体内で不足するインスリンを補い、インスリン療法が適応となる糖尿病に用いる |
メトホルミンは、主に肝臓で作られる糖を抑える働きを持つ薬です。DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、食事に応じて分泌されるインクレチンの仕組みに関係します。DPP-4阻害薬は体内のインクレチンが分解されるのを抑え、GLP-1受容体作動薬はGLP-1受容体を直接刺激します。
SGLT2阻害薬は、腎臓でいったん尿中に出た糖を血液へ戻す働きを抑え、尿中へ糖を排出させます。血糖を下げる作用に加えて、製品によっては慢性心不全や慢性腎臓病に関する承認適応を持つものがあります。ただし、糖尿病以外も含めた適応は成分・製品ごとに異なるため、一律に扱うことはできません。
スルホニルウレア薬や速効型インスリン分泌促進薬は、インスリン分泌を促す薬です。食事量が少ない、食事が遅れる、他の血糖降下薬やインスリンを併用するなどの状況では、低血糖に注意が必要になります。
インスリン療法は、体内のインスリン不足を補う治療です。1型糖尿病では不可欠な治療であり、2型糖尿病でも、病状や治療経過により必要になることがあります。インスリン製剤には、食事に伴う血糖上昇に対応する追加分泌を補う超速効型・速効型、日常の基礎分泌を補う持効型溶解インスリン、中間型、あらかじめ複数の作用特性を組み合わせた混合型などがあります。
たとえばインスリン グラルギンは、持続的な基礎インスリン補充を意図した製剤です。国内の製剤では、効能又は効果として「インスリン療法が適応となる糖尿病」が示されています。国立医薬品食品衛生研究所:インスリン グラルギン(遺伝子組換え) インスリンの種類や組み合わせは、食事、活動、血糖測定、低血糖歴、生活リズムなどを踏まえて個別に決められます。
糖尿病治療薬には錠剤、口腔内崩壊錠、注射剤、ペン型注入器、週1回投与製剤などがあります。注射薬には、自己注射で使う薬と医療機関で管理する薬があり、操作方法、保管、針の扱い、使用済み器材の廃棄方法まで確認が必要です。
インスリン製剤の作用時間は薬ごとに異なり、同じ「インスリン」でも目的が異なります。製剤の取り違えや、自己判断での中止・変更は、重い高血糖や低血糖につながるおそれがあります。処方内容が変わったときは、製品名、色や形状、注入器の使い方を必ず確認します。
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