けいれん・運動・認知を調整する薬

けいれん・運動・認知を調整する薬

けいれん・運動・認知を調整する薬は、脳や神経の異常な興奮、神経伝達物質の不足や偏りに働きかける医療用医薬品です。てんかん発作を抑える抗てんかん薬、パーキンソン病などで運動症状を改善する薬、アルツハイマー型認知症などの進行に伴う症状に用いる薬

けいれん・運動・認知を調整する薬は、脳や神経の異常な興奮、神経伝達物質の不足や偏りに働きかける医療用医薬品です。てんかん発作を抑える抗てんかん薬、パーキンソン病などで運動症状を改善する薬、アルツハイマー型認知症などの進行に伴う症状に用いる薬が含まれます。いずれも同じ「脳の薬」ではなく、対象疾患、作用の仕組み、使う目的が異なります。


主な種類と承認用途の例





種類 一般名の例 主な承認用途の例
抗てんかん薬 レベチラセタム てんかん患者の部分発作、全般発作に対する抗てんかん薬との併用療法など
抗てんかん薬 ラモトリギン てんかん、双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制
抗てんかん薬 バルプロ酸ナトリウム てんかん、躁病および躁うつ病の躁状態、片頭痛発作の抑制など
抗パーキンソン病薬 レボドパ・ベンセラジド塩酸塩 パーキンソン病、パーキンソン症候群
ドパミン受容体作動薬 プラミペキソール塩酸塩水和物 パーキンソン病、レストレスレッグス症候群
認知症治療薬 ドネペジル塩酸塩 アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制など
認知症治療薬 メマンチン塩酸塩 中等度から高度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制


けいれんを抑える薬


てんかんは、脳の神経細胞が一時的に過剰に興奮することで、けいれん、意識の変化、行動停止、感覚の異常などを繰り返す病気です。抗てんかん薬は、神経の興奮を抑える、興奮性の情報伝達を弱める、抑制性の神経伝達を補うなど、複数の仕組みで発作を抑えます。


薬の選択では、発作の種類、年齢、妊娠可能性、肝臓・腎臓の機能、併用薬、生活上の状況などが考慮されます。同じ抗てんかん薬でも、単独で用いる場合と他の薬と併用する場合があり、承認されている発作型や使い方は製剤ごとに異なります。発作の再発防止には、継続して服用することが重要ですが、自己判断で急に中止すると発作が悪化するおそれがあります。


運動を調整する薬


パーキンソン病では、脳内で運動の調節に関わるドパミンが不足し、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、手足が震える、姿勢を保ちにくいといった症状が現れます。レボドパは脳内でドパミンに変換される薬で、ベンセラジドなどと配合することで、脳に届く前の分解を抑えます。


プラミペキソールなどのドパミン受容体作動薬は、ドパミン受容体を刺激することで症状を改善します。年齢、症状の現れ方、日内変動、治療経過、副作用の出方によって使い分けられます。運動症状だけでなく、眠気、幻覚、立ちくらみ、衝動性の変化などにも注意しながら治療を続けます。


認知を調整する薬


アルツハイマー型認知症では、記憶や判断、日常生活の機能が徐々に低下します。ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬は、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを保ち、認知症症状の進行を抑制する目的で用いられます。メマンチンは、過度な興奮性の神経伝達に関係するNMDA受容体に作用する薬です。


これらは認知症の原因そのものを取り除く薬ではなく、病状の進行に伴う症状を管理する治療の一部です。生活環境の調整、介護者支援、合併症への対応、運転や金銭管理などの安全面の支援も大切になります。


注意したいこと


  • 抗てんかん薬では、眠気、めまい、ふらつき、集中力低下のほか、薬によって皮膚症状、肝機能障害、血液障害などに注意が必要です。

  • ラモトリギンでは重い皮膚障害が問題となることがあり、発熱、目の充血、口内のただれ、水疱を伴う発疹などがあれば、速やかに医療機関へ相談します。

  • 抗パーキンソン病薬では、眠気や突発的な睡眠、幻覚、立ちくらみ、むくみ、衝動制御障害などが起こることがあります。

  • 認知症治療薬では、食欲低下、吐き気、下痢、脈が遅くなること、めまいなどに注意が必要です。貼付剤では皮膚症状も確認します。

  • けいれん、意識障害、急な片麻痺、突然の言葉のもつれは緊急対応が必要なことがあります。いつもの発作・症状と異なる場合は、早急に医療機関へ連絡してください。


参考情報


PMDA 医療用医薬品情報検索(抗てんかん薬・抗パーキンソン病薬・認知症治療薬の電子添文)


日本神経学会