医療機器の定義・分類・安全管理を徹底解説

医療機器の定義・分類・安全管理を徹底解説

医療機器は診断、治療、予防、身体機能の補助などに用いられ、リスク分類に応じて規制や安全管理の方法が異なります。医療従事者が導入から保守、回収対応まで適正に運用するには、何を確認すべきでしょうか?

医療機器の基礎知識と核心ガイド

医療機器を安全に運用する要点
使用目的とリスク区分を把握する

医療機器は目的と患者リスクにより区分され、区分ごとに製造販売時の手続きや現場で求められる管理の考え方が異なります。

導入前から廃棄までを管理する

選定、教育、保守点検、修理、更新、回収対応を個別に扱わず、機器のライフサイクル全体として記録・管理することが重要です。

情報収集と院内共有を仕組みにする

添付文書改訂、不具合、安全性情報、回収情報を継続的に確認し、対象機器と患者への影響を迅速に評価できる体制を整えます。


医療機器とは何かを薬機法の目的から理解する


医療機器とは、単に医療現場で使用される機械や装置の総称ではありません。日本の医薬品医療機器等法、いわゆる薬機法では、人または動物の疾病の診断、治療、予防に使用されること、あるいは身体の構造または機能に影響を及ぼすことを目的とする機械器具等で、政令で定めるものを医療機器として扱います。したがって、医療機器の範囲には大型の画像診断装置や人工呼吸器だけでなく、注射針、カテーテル、手術用器具、血糖測定器、補聴器、コンタクトレンズ、プログラム医療機器なども含まれます。
医療現場では、製品の見た目や価格だけで医療機器か否かを判断しないことが重要です。たとえば、スマートフォンやタブレット端末そのものは一般的な情報機器であっても、診断・治療・予防を目的として設計され、医学的判断に用いる機能を提供するソフトウェアは、プログラム医療機器として規制対象となる場合があります。逆に、健康増進や一般的な運動記録を目的とするアプリであっても、表示内容、広告表現、使用目的、医療者の利用方法によっては、医療機器該当性を慎重に検討する必要があります。
医療機器に共通する重要な特徴は、機器単独で安全性が完結しない点です。性能や設計の品質に加え、使用者の知識と技能、患者の状態、使用環境、消耗品・付属品の組み合わせ、保守点検の実施状況、アラームへの対応、記録と情報共有が安全性を左右します。特に生命維持管理装置や侵襲性の高い機器では、装置が正常に作動していても、設定条件、接続状態、患者観察、手順の逸脱などによって重大な有害事象につながるおそれがあります。
そのため医療従事者には、「機器を操作できる」だけではなく、「その機器を誰に、どの目的で、どの条件下で使うべきか」「異常時に患者安全を優先してどう行動するか」「誰に連絡し、何を記録するか」を理解することが求められます。医療機器の知識は臨床工学部門や医療機器管理部門だけに必要な専門領域ではなく、使用に関わる全職種が共有すべき医療安全の基盤です。
PMDA:承認審査関連業務(医療機器の区分)


クラス分類と製造販売手続きの違いを押さえる

医療機器は、不具合が生じた場合に患者の生命や健康へ及ぼし得るリスクに応じて、原則としてクラスIからクラスIVまでに分類されます。クラスが高くなるほど、患者への侵襲性や不具合時の影響が大きくなり、製造販売前に求められる確認や審査の水準も高くなります。医療現場の職員が個別製品について薬事手続きを担うことは通常ありませんが、分類の考え方を知ることは、導入審査、教育計画、保守点検の優先順位、院内での使用制限を検討するうえで有用です。
一般医療機器に位置付けられるクラスIは、不具合が発生しても人体へのリスクが極めて低いと考えられる機器です。管理医療機器に該当するクラスIIは、比較的低いリスクとされますが、適切な管理が必要な機器です。高度管理医療機器であるクラスIIIおよびクラスIVは、不具合時に比較的高いリスク、または生命への危険に直結するおそれがあるため、より厳格な規制の対象となります。クラスIIのうち認証基準がある機器は第三者認証機関による認証の対象となり、クラスIII・IVを含む高度管理医療機器は、原則として厚生労働大臣の承認が必要で、PMDAが審査に関わります。

区分 基準・内容 備考
クラスI 不具合が生じても人体へのリスクが極めて低いと考えられる一般医療機器 原則として製造販売届出の対象
クラスII 不具合時の人体リスクが比較的低い管理医療機器 認証基準がある品目は第三者認証の対象
クラスIII 不具合時の人体リスクが比較的高い高度管理医療機器 原則として製造販売承認の対象
クラスIV 不具合時に生命の危険へ直結するおそれがある高度管理医療機器 より慎重な審査・管理が必要

ここで注意すべきなのは、クラス分類が院内の危険度評価を完全に代替するものではないことです。同じクラスの機器であっても、患者の重症度、設置場所、使用頻度、使用する職種、夜間の支援体制、代替手段の有無によって、実務上の管理リスクは変化します。たとえば設定ミスや接続不良が患者状態へ直結しやすい機器では、使用前点検、ダブルチェック、アラーム設定の標準化、緊急時の代替手段の準備を含めた院内ルールが必要です。
また、「医療機器のクラス」と「回収情報におけるクラスI・II・III」は同じ意味ではありません。前者は製品のリスクに応じた規制区分であり、後者は回収対象製品の使用などによって生じ得る健康被害の危険性に応じた回収の区分です。用語が同じであっても対象と目的が異なるため、医療安全会議や院内研修では混同しないよう明確に説明する必要があります。


医療機関に求められる安全管理体制と保守点検

医療機器の安全管理では、導入後に「壊れたら修理する」という受け身の対応だけでは不十分です。医療機関では、医療機器安全管理責任者を配置し、安全使用のための研修、保守点検計画の策定と実施、安全性情報の収集・報告といった体制を整えることが重要になります。安全管理責任者は、必ずしもすべての点検を一人で実施する役割ではありません。臨床工学技士、看護師、医師、放射線技師、薬剤師、事務部門、購買部門、委託業者などと連携し、管理状況が把握できる仕組みを作る役割を担います。
保守点検は、日常点検、定期点検、故障時対応、修理後確認、更新判断に分けて考えると整理しやすくなります。日常点検では、電源、外観、接続部、アラーム、消耗品、有効期限、作動状況などを確認します。定期点検では、メーカー推奨の点検周期、院内の使用頻度、法令や通知、過去の不具合履歴を踏まえ、性能確認や部品交換を計画します。点検実施後は、単に「実施済み」と記録するのではなく、点検日、担当者、対象機器の識別情報、確認項目、異常の有無、対応内容、次回予定を追跡できる形で残すことが重要です。
医療機器の保守点検を外部委託する場合も、医療機関側の責任が消えるわけではありません。委託先の作業内容、実施日、未実施項目、修理推奨事項、使用可否、点検結果の記録を確認し、院内台帳へ反映する必要があります。特に人工呼吸器、輸液ポンプ、シリンジポンプ、透析装置、除細動器、麻酔器、放射線関連機器などは、患者への影響、稼働停止時の代替性、使用場所の広がりを踏まえた管理が求められます。

  • 機器ごとに管理番号、製造番号、設置場所、使用部署、導入日、保守契約、修理履歴を台帳で一元化する
  • 使用前・使用中・使用後に確認する項目を機種別のチェックリストとして標準化する
  • 異常やヒヤリ・ハットを発見した場合は、患者対応を優先しつつ機器の隔離、記録、関係部署への報告を行う
  • 消耗品、専用回路、バッテリー、付属品も機器本体と一体の安全管理対象として扱う
  • 更新期限や部品供給終了の情報を把握し、故障後ではなく計画的に更新を検討する

厚生労働省:医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点


導入・使用時のリスクを減らす実務ポイント

新しい医療機器を導入する際は、価格、機能、操作性だけで選定を完結させないことが重要です。まず、想定する使用目的と適応患者、使用部署、既存機器との接続性、電源・ネットワーク環境、専用消耗品の供給体制、保守契約、修理時の代替機、教育の負担、廃棄方法まで確認します。高機能な機器であっても、院内の運用体制や人員配置、教育時間、保守能力と適合しなければ、十分な安全性や費用対効果を得られません。
導入評価では、実際に使用する職種を早期から参加させることが有効です。たとえば輸液ポンプであれば、看護師だけでなく、薬剤部門、臨床工学部門、医師、感染管理担当者などが、薬剤ライブラリ、閉塞アラーム、流量設定、使用場所、充電管理、清拭方法、搬送時の運用を確認します。操作画面の分かりやすさやアラーム音の聞き取りやすさは、仕様書だけでは評価しにくいため、現場試用やシミュレーションを取り入れる意義があります。
使用開始後は、添付文書や取扱説明書を保管するだけでは足りません。使用目的、禁忌・禁止、使用上の注意、警告、点検方法、アラームの意味、トラブル時の連絡先を、現場で参照しやすい手順書や教育資料へ落とし込みます。ただし、院内手順書は添付文書を置き換えるものではないため、改訂時には必ず原資料との整合を確認します。添付文書の改訂情報を把握し、必要に応じて教育資料や電子カルテの運用、チェックリストを更新する流れを定着させることが重要です。
緊急時の基本原則は、原因分析より先に患者安全を確保することです。機器のアラームや異常表示が出た場合、使用者は画面や装置だけを見るのではなく、まず患者の意識、呼吸、循環、苦痛、治療効果を評価します。生命維持に関係する機器では、施設の手順に従い、必要に応じて代替手段へ移行し、応援を要請します。その後に接続、電源、回路、消耗品、設定、履歴を確認し、異常機器は誤って再使用されないよう明確に隔離・表示して、所定の報告ルートへつなげます。


安全性情報・回収情報を患者安全へつなげる

医療機器の安全管理は、購入時や導入時だけで終わりません。市販後には、製造販売業者、PMDA、厚生労働省などから、不具合情報、添付文書改訂、使用上の注意の変更、回収情報、適正使用に関する通知が発信されます。これらの情報を誰が受け取り、どの部署が対象機器を特定し、患者への影響をどう評価し、現場へどう周知するかを事前に決めておく必要があります。
回収情報を受け取った際には、「対象機器が院内にあるか」だけで判断してはいけません。まず、製品名、製造番号、ロット番号、販売名、対象期間、対象となる付属品やソフトウェアの版数を照合します。次に、院内在庫、病棟・外来・手術室・検査部門などの設置場所、貸出台帳、患者宅で使用されている機器、すでに廃棄・返却済みの機器を確認します。対象機器が特定された場合は、回収の理由、健康被害の可能性、使用継続の可否、暫定対応、メーカーへの連絡、患者説明の必要性を評価し、実施内容を記録します。
PMDAの回収情報では、回収の健康危険度に応じてクラスI、クラスII、クラスIIIが割り当てられます。クラスIは、製品の使用などが重篤な健康被害または死亡の原因となり得る状況、クラスIIは一時的または医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況など、クラスIIIは健康被害の原因となるとはまず考えられない状況とされています。もっとも、回収区分だけを見て対応の優先順位を機械的に決めるのではなく、自施設での使用実態、対象患者、代替機器の有無、現在使用中かどうかを踏まえて、速やかにリスク評価を行う必要があります。
安全性情報への対応を実効性のあるものにするには、医療機器台帳の情報精度が不可欠です。管理番号、設置場所、製造番号、ソフトウェアのバージョン、保守契約先、使用部門、代替機の有無が最新化されていなければ、対象機器の抽出に時間がかかり、現場への周知も遅れます。日常の台帳更新、点検記録、不具合報告を別々の書類として放置せず、情報が相互に参照できる運用へ整えることが、迅速な安全対応につながります。
PMDA:回収情報(医療機器)
医療機器を安全に活用するための核心は、機器の性能を理解することだけではありません。適正な使用目的を守り、リスクに応じた分類と規制の意味を知り、導入前の評価から教育、保守点検、不具合対応、回収、更新までを一続きの管理として実践することが重要です。現場で生じる小さな違和感、操作の迷い、アラーム対応のばらつき、消耗品管理の不備を見逃さず、機器、人、手順、環境の関係を継続的に改善することが、患者と医療従事者の双方を守る医療機器安全管理の土台となります。




病院クリニック用医療機器の設計と開発