がん治療の副作用・症状を和らげる薬

がん治療の副作用・症状を和らげる薬

がん治療では、がんそのものを標的にする薬と並行して、吐き気、痛み、骨病変、貧血、感染症リスクなどを予防・軽減する支持療法が重要です。この分類では、抗がん薬や放射線治療に伴う症状、がんや骨転移による問題を和らげるために用いる医療用医薬品を扱い

がん治療の副作用・症状を和らげる薬


がん治療では、がんそのものを標的にする薬と並行して、吐き気、痛み、骨病変、貧血、感染症リスクなどを予防・軽減する支持療法が重要です。この分類では、抗がん薬や放射線治療に伴う症状、がんや骨転移による問題を和らげるために用いる医療用医薬品を扱います。


支持療法薬は「つらいときに同じ薬を追加すればよい」というものではありません。症状の原因が治療の副作用なのか、感染症、腸閉塞、臓器障害、がんの進行など別の問題なのかを見分ける必要があります。承認された用途、治療レジメン、症状の程度、検査値に応じて、医師・薬剤師が選択します。





種類 成分の例 用途と役割
NK1受容体拮抗型制吐薬 アプレピタント、ホスアプレピタント、ホスネツピタント 抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐を、他の制吐薬と組み合わせて予防する
5-HT3受容体拮抗薬 パロノセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン 抗がん薬による急性期を中心とした悪心・嘔吐の予防に用いる
骨修飾薬 デノスマブ、ゾレドロン酸 多発性骨髄腫や固形がん骨転移による骨病変の進行や骨関連事象の抑制を目的に用いる
制吐補助薬 オランザピン シスプラチン等の抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐に、他の制吐薬と組み合わせて用いる。糖尿病・その既往がある人は禁忌
G-CSF製剤 フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム がん化学療法による好中球減少症や発熱性好中球減少症のリスクを下げる目的で用いる
がん疼痛治療薬 モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル 中等度から高度のがん疼痛で、痛みの程度や原因を踏まえて用いる


吐き気・嘔吐を予防する薬


抗がん薬による悪心・嘔吐は、抗がん薬の催吐性、投与日数、過去の吐き気の経験、年齢、飲酒歴なども踏まえて予防策を組み立てます。アプレピタントはNK1受容体を標的にする制吐薬で、強い悪心・嘔吐を生じる抗悪性腫瘍剤の投与時に、原則として副腎皮質ステロイド薬や5-HT3受容体拮抗薬と併用することが電子添文に示されています。アプレピタントカプセルの医薬品インタビューフォーム・添付文書情報


制吐薬には、治療当日から起こりやすい急性期の症状を主に考える薬と、翌日以降にも続く遅発期の症状まで見据える薬があります。実際の処方は、抗がん薬の組み合わせごとに定められた支持療法の計画に従います。自宅で吐き気が強い、飲水が難しい、尿量が減った、繰り返し嘔吐する場合は、脱水やほかの原因も含めて医療機関へ連絡が必要です。


骨病変への薬と痛みへの薬


デノスマブはRANKLを標的とし、破骨細胞の活性化を抑えて骨吸収を抑制します。国内では、多発性骨髄腫による骨病変および固形がん骨転移による骨病変などに対する適応があります。がんの大きさを直接小さくする目的の薬ではなく、骨病変に伴う骨折、脊髄圧迫、骨への放射線治療や手術などの骨関連事象を抑えることを目指す治療の一つです。PMDA「デノスマブ製剤 添付文書情報」


骨修飾薬では低カルシウム血症や顎骨壊死・顎骨骨髄炎に注意が必要です。開始前から歯科的な問題を確認し、抜歯などの侵襲的歯科処置については、がん治療を担当する医師と歯科医師が連携して判断します。乳がん骨転移に対する骨修飾薬については、日本乳癌学会の診療ガイドラインでも、効果と有害事象の両面が整理されています。日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン2022年版 BQ8」


使い分けと注意点


  • G-CSF製剤は、発熱時の感染症を自宅で治す薬ではありません。発熱性好中球減少症が疑われる場合は、速やかな診察と感染評価が必要です。

  • 赤血球造血刺激因子製剤は、すべての貧血に用いる薬ではありません。出血、鉄欠乏、腎機能、がん治療の内容などを踏まえて原因を評価します。

  • オピオイド鎮痛薬は、便秘、眠気、吐き気などへの対策も含めて調整します。急な増減や他人との共有は危険です。

  • 痛みが急に強くなった、手足が動かしにくい、排尿・排便の異常が出た場合は、脊髄圧迫など緊急の評価が必要なことがあります。

  • 症状を和らげる治療は、がん治療を続けやすくするだけでなく、生活の質を保つための治療でもあります。


参考情報:PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」


参考情報:日本肺癌学会「肺がん患者さんのためのガイドブック:骨転移への対処」


PMDA オランザピンの電子添文