

「ふれきししーる」は、一般にコンバテック社のフレキシシール®便失禁管理システムを指す検索語です。フレキシシールは、水様性の便または泥状便を閉鎖式に回収・管理するための、シリコーン製チューブとコレクションパウチから構成される便失禁管理システムです。便を肛門周囲から遠ざけて回収することで、排泄物による皮膚への刺激、創傷・手術部位・熱傷部位の便汚染、創感染や細菌の環境への拡散といったリスクを低減することを目的とします。
convatec(https://www.convatec.com/ja-jp/flexi-seal/)
本システムは、単に「おむつ交換を減らす器具」ではありません。下痢便が持続し、皮膚の浸軟や失禁関連皮膚炎が懸念される患者、肛門周囲に開放創・手術創・熱傷があり便汚染を避けたい患者、易感染状態にあり感染対策を強化したい患者などにおいて、排泄管理と創傷管理を接続する医療機器として位置づけられます。閉鎖式で回収することにより、頻回のおむつ交換や洗浄に伴う患者の苦痛、看護ケアの身体的・時間的負担の軽減も期待されます。
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一方で、ふれきししーるは下痢の原因を治療する装置ではありません。感染性腸炎、抗菌薬関連下痢、Clostridioides difficile感染症、経腸栄養関連下痢、薬剤性下痢、虚血性腸炎、炎症性腸疾患などの原因評価と治療は別途必要です。便失禁管理システムの導入は、排泄物への曝露を減らす対症的かつ補助的な介入であり、便性状、排便量、腹部所見、バイタルサイン、検査結果、栄養・水分管理を統合して判断します。
製品には、フレキシシール®PROTECT Plusやフレキシシール®SIGNALなどがあり、前者には便飛散の低減を意図した自閉式コネクター、過剰なバルーン膨張を知らせるインジケーター、チューブ洗浄用ポートなどが設けられています。後者には、適正なバルーン容量の確認を補助するシグナルインジケーターや、挿入操作を補助するフィンガーポケットが備えられています。実際の適用手順、接続方法、洗浄方法、使用期限、採便・投薬ポートの可否は、導入する製品の最新添付文書と施設手順書で必ず確認してください。
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フレキシシール®便失禁管理システム 製品情報
ふれきししーるの適応を考える際は、「下痢をしている」という一点だけで決めないことが重要です。対象となり得るのは、原則として水様便または泥状便が持続し、便失禁による皮膚汚染や創部汚染を管理上の問題として抱える患者です。成形便、硬便、便塊を伴う排便、直腸内に便塞栓が疑われる場合は、閉鎖式便失禁管理システムが適切に機能しない可能性があり、むしろ排泄障害や局所トラブルを助長するおそれがあります。
感染対策の視点も重要です。感染性下痢の患者では、便の適切な回収・廃棄、接触予防策、手指衛生、環境清掃、個人防護具の適切な使用を同時に徹底する必要があります。ふれきししーるを使用しても、標準予防策や接触予防策が不要になるわけではありません。便処理の機会や飛散・曝露の可能性を減らす補助策として捉え、患者周辺環境の汚染管理と職員教育を組み合わせます。
| 評価項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 便性状 | 水様便または泥状便が持続し、閉鎖式回収が可能か確認する | 成形便、硬便、便塞栓が疑われる場合は適応を再検討する |
| 皮膚・創部 | 失禁関連皮膚炎、褥瘡、手術創、熱傷、肛門周囲の皮膚状態を評価する | 便汚染による悪化リスクと皮膚保護の必要性を判断する |
| 直腸・肛門 | 出血、疼痛、狭窄、外傷、術後状態、粘膜障害の有無を確認する | 禁忌・慎重使用に該当しないか添付文書で確認する |
| 感染管理 | 感染性下痢の可能性、便検査、接触予防策、環境汚染リスクを評価する | システム導入後も手指衛生と環境整備を継続する |
| 治療計画 | 下痢の原因治療、栄養、水分、薬剤、経腸栄養投与状況を確認する | 便管理だけで原因治療を遅らせない |
適応判断は、医師、看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、感染管理担当者、薬剤師、管理栄養士、リハビリテーション職などが、患者の病態に応じて協働して行うことが望まれます。特に、急性期の下痢は便性状が短期間で変化しやすいため、開始時だけでなく、毎日の継続必要性の評価が欠かせません。
ふれきししーるは直腸内にカテーテルを留置し、保持バルーンを用いる医療機器であるため、使用前に禁忌・禁止事項と慎重使用が必要な状態を確認しなければなりません。製品の添付文書で最新情報を確認することが大前提ですが、一般に注意すべき状態として、下部大腸または直腸の手術後間もない患者、直腸・肛門に外傷がある患者、直腸・肛門の重度狭窄がある患者などが挙げられます。日本褥瘡学会の資料でも、便失禁管理システムに関して、装着すべきでない患者を添付文書の警告・禁忌欄で確認することが示されています。
jspu(https://www.jspu.org/medical/books/docs/bestpractice_mdrpu.pdf)
直腸出血、粘膜損傷、疼痛、圧迫による組織障害は、見過ごしてはならない有害事象です。抗凝固薬や抗血小板薬を使用している患者、凝固障害がある患者、血小板減少患者、低灌流状態や低栄養状態にある患者、粘膜が脆弱と考えられる患者では、出血や損傷が重大化する可能性を考慮します。装着中に新規の血便・鮮血便、直腸出血、原因不明の血圧低下、頻脈、貧血の進行、腹痛、腹部膨満、強い不穏、局所の著明な疼痛などがあれば、機器に関連する合併症を含めて速やかに評価します。
医療関連機器による皮膚・組織損傷は、医療関連機器圧迫創傷、すなわちMDRPUの観点からも管理が必要です。日本褥瘡学会は、医療関連機器による圧迫で生じる皮膚または下床組織の損傷をMDRPUとして位置づけ、機器要因、個体要因、ケア要因を踏まえた予防・管理を提案しています。機器のサイズや形状の不適合、浮腫、循環不全、低栄養、湿潤、感覚・認知機能の低下、不十分な皮膚観察などがリスクを高めます。
jspu(https://www.jspu.org/medical/books/docs/bestpractice_mdrpu.pdf)
医療関連機器の安全使用では、「一度装着したら所定期間まで使用する」という発想を避けるべきです。患者にとって便失禁管理システムを必要とする利益が、直腸留置に伴う侵襲・有害事象のリスクを上回るかを、日々再評価します。装置の使用が目的化すると、適応外の継続、観察の形骸化、異常発見の遅れにつながります。
ふれきししーるの装着中は、排液量だけではなく、回収経路が安全に機能しているかを多面的に観察します。まず確認したいのは、チューブの屈曲、牽引、ねじれ、圧迫、パウチの位置不良、接続部の緩みです。ベッド柵、体位、寝具、移乗時の引っ掛かりなどによってチューブに張力が加わると、患者の直腸への負荷、漏れ、接続不良、皮膚への圧迫につながる可能性があります。
便の量・色・性状・混入物を記録し、急な変化を見逃さないことも重要です。例えば、排液量の急な減少は、下痢の改善だけでなく、チューブの閉塞、屈曲、便の粘稠化、直腸内での漏れや貯留を示す場合があります。反対に、急な大量排液は、感染性腸炎の進行、栄養剤投与との関連、下剤や抗菌薬の影響、循環血液量減少や電解質異常のリスクを含めて評価します。
皮膚観察では、肛門周囲、臀部、仙骨部、会陰部のみでなく、チューブ固定やパウチが接触する部位、下肢や寝具との接触部にも目を向けます。便失禁管理システムは皮膚汚染を低減し得ますが、使用中の漏れ、湿潤、粘着部の刺激、摩擦・ずれ、長時間同じ体位での圧迫があれば、皮膚障害のリスクは残ります。皮膚の発赤、浸軟、びらん、疼痛、出血、悪臭、排泄物の付着範囲を評価し、スキンケアと体位調整を行います。
日本褥瘡学会のMDRPU予防・管理の考え方では、医療機器を装着する患者について、身体状態と機器要因を評価し、適切なサイズ・材質の選択、フィッティング、皮膚観察、外力の低減、栄養管理、患者教育、多職種連携を組み合わせることが示されています。装着部とその周囲皮膚は、少なくとも1日2回を目安に観察し、圧迫兆候の有無を確認する考え方が示されており、施設の観察基準に落とし込むことが重要です。
jspu(https://www.jspu.org/medical/books/docs/bestpractice_mdrpu.pdf)
実務上は、観察結果を「問題なし」とだけ記載するのではなく、便性状、排液の流れ、漏れの有無、肛門周囲皮膚、直腸出血の有無、チューブ牽引の有無、患者の訴え、継続適応を具体的に記録します。記録の標準化は、勤務交代時の情報共有を円滑にし、合併症の早期発見にも役立ちます。
ふれきししーるを安全に運用するには、個人の手技に依存しない仕組みづくりが必要です。導入時には、誰が適応を判断し、禁忌確認をどの記録で行い、挿入者の教育をどう担保し、異常時に誰へ報告するかを明確にします。特に、直腸内留置を伴う医療機器では、看護師単独での判断範囲と医師への報告基準を施設内で具体化しておくことが重要です。
例えば、「水様便が24時間以上持続し、会陰部皮膚障害または創部汚染リスクがある」「直腸・肛門の禁忌所見がない」「便塞栓を除外した」「出血リスクに関する医師評価がある」「下痢の原因検索・治療計画が並行している」といった導入確認項目をチェックリスト化すると、適応の見落としや安易な使用を減らせます。製品の操作は、メーカーの添付文書、ケアマニュアル、院内教育資料に基づき、導入製品ごとに統一する必要があります。
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継続中は、日々の回診・カンファレンスで「まだ必要か」を確認します。便性状が成形化した、下痢の頻度が減った、創部が保護され便汚染リスクが低下した、離床や排便コントロールが可能になった、直腸出血や疼痛などの有害事象が懸念される、といった変化があれば、早期抜去を検討します。装置の継続は利便性ではなく、患者利益を根拠として判断します。
感染管理部門との連携も欠かせません。感染性下痢が疑われる患者では、採便、検査結果、接触予防策、環境清掃、リネン・廃棄物の取り扱いを共有します。便失禁管理システムがあっても、パウチ交換や排液操作時には曝露の可能性があるため、適切な個人防護具の着用、手指衛生、汚染面の清拭・消毒、廃棄手順の遵守が必要です。
ふれきししーるは、便による皮膚・創部・環境の汚染を減らす有用な選択肢になり得ます。しかし、適応外使用、禁忌の見落とし、過度な継続、観察不足があれば、直腸損傷や出血、医療関連機器圧迫創傷といった新たなリスクを招きます。便性状、直腸・肛門の状態、出血リスク、皮膚・創部、感染管理、患者の全身状態を一体として評価し、添付文書と施設基準に沿って、導入・観察・抜去をチームで管理することが安全な活用の基盤です。
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