炎症の情報伝達を抑える薬

炎症の情報伝達を抑える薬

炎症の情報伝達を抑える薬は、炎症性サイトカインや細胞内シグナル伝達に働きかけ、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎などの慢性炎症性疾患を治療する薬です。非ステロイド性抗炎症薬や副腎皮質ステロイドとは異なり、病気の進行に関わる免

炎症の情報伝達を抑える薬は、炎症性サイトカインや細胞内シグナル伝達に働きかけ、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎などの慢性炎症性疾患を治療する薬です。非ステロイド性抗炎症薬や副腎皮質ステロイドとは異なり、病気の進行に関わる免疫・炎症の経路を標的にする薬が多く含まれます。


代表的には、炎症性サイトカインを直接標的にする生物学的製剤、細胞内で情報を伝える酵素を抑えるJAK阻害薬、炎症性疾患の基本治療薬として位置付けられる抗リウマチ薬があります。薬ごとの承認疾患は大きく異なるため、同じ分類だからといって置き換えられるものではありません。


主な種類と承認用途の例





種類 一般名の例 主な承認用途の例
抗リウマチ薬 メトトレキサート 関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬、関節症性乾癬など
抗TNFα抗体 アダリムマブ 関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、ぶどう膜炎など製剤ごとの承認用途
抗IL-6受容体抗体 トシリズマブ 関節リウマチ、若年性特発性関節炎、成人スチル病、サイトカイン放出症候群など
抗IL-17A抗体 セクキヌマブ 乾癬、関節症性乾癬、強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎など
JAK阻害薬 トファシチニブクエン酸塩 既存治療で効果不十分な関節リウマチ、中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入・維持療法(既存治療で効果不十分な場合)
JAK阻害薬 ウパダシチニブ水和物 関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬性関節炎など、製品ごとの承認用途


炎症の伝達経路を標的にする


慢性炎症性疾患では、免疫細胞が作るTNFα、IL-6、IL-17などのサイトカインが、炎症の持続、組織の破壊、痛み、腫れ、皮膚症状、腸の症状などに関わります。生物学的製剤は、こうした特定の物質や受容体を標的にし、炎症の情報伝達を抑える薬です。


JAK阻害薬は、細胞表面の受容体が受け取ったサイトカインの情報を細胞内へ伝えるJAKという酵素を阻害します。複数のサイトカイン経路に影響し得るため、疾患活動性の抑制が期待される一方、感染症、血液検査値の変化、心血管系のリスクなどを含めた慎重な評価が必要です。


メトトレキサートの位置付け


メトトレキサートは、関節リウマチをはじめとする疾患で広く用いられる抗リウマチ薬です。炎症や免疫反応を調整し、関節炎の症状だけでなく、関節破壊の進行を抑えることを目的として使われます。生物学的製剤やJAK阻害薬と併用される場合もありますが、すべての人に同じ組合せが適するわけではありません。


病気の活動性、臓器障害、感染症の有無、妊娠に関する状況、これまでの治療歴、検査値などを評価して治療が決められます。効果の判定には一定期間を要することがあり、痛みの強さだけで薬の適否を判断しないことが重要です。


剤形と治療継続


生物学的製剤には、医療機関で点滴静注する薬と、皮下注射する薬があります。皮下注射剤の一部は、適切な指導・管理の下で自己注射が選択されることもあります。内服のJAK阻害薬は注射が不要な一方で、飲み忘れ、相互作用、感染症の兆候などを確認しながら継続します。


治療中には、症状の変化だけでなく、血液検査、肝機能・腎機能、感染症のスクリーニングなどが行われます。薬の種類を問わず、定期受診と検査は安全な治療の一部です。


注意したいこと


  • これらの薬は免疫反応を抑えるため、結核、B型肝炎ウイルス、帯状疱疹を含む感染症に注意が必要です。治療前に感染症の確認を行うことがあります。

  • 発熱、咳、息切れ、下痢、排尿時の痛み、皮膚の水疱、治りにくい傷などがあれば、感染症を疑って早めに相談してください。

  • メトトレキサートでは、骨髄抑制、肝障害、間質性肺炎、口内炎などに注意が必要です。葉酸製剤を含む併用薬や検査については処方医の説明に従います。

  • JAK阻害薬では、重篤な感染症、血栓塞栓症、悪性腫瘍、心血管系事象などについて、患者背景に応じた注意が必要です。

  • ワクチンの種類や接種時期は治療内容によって調整が必要になることがあります。接種前に主治医または薬剤師へ確認してください。


参考情報


PMDA 医療用医薬品情報検索(抗リウマチ薬・生物学的製剤・JAK阻害薬の電子添文)


一般社団法人日本リウマチ学会


PMDA ゼルヤンツの効能追加に関する資料