

「ツムラの咳止めは何番ですか」という問いに対して、最も端的な回答は、ツムラ29番の麦門冬湯(ばくもんどうとう)です。医療用製剤の正式名称は「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)」で、分包や薬袋では「ツムラ麦門冬湯」「29」などと確認できます。
医療用のツムラ麦門冬湯エキス顆粒は、効能又は効果として「痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく」が示されています。特に、咽頭の乾燥感があり、コンコンと続く乾いた咳、または少量で粘稠な痰が気道・咽頭に付着して切れにくい咳を訴える場面で、候補として認識される処方です。かぜ罹患後に咳だけが長引く症例でも、咳の性状と全身状態を踏まえ、麦門冬湯が検討されることがあります。
参考)302 Found
ただし、「咳止め=ツムラ29番」と一律に説明することは適切ではありません。咳嗽は症状名であり、感染症、咳喘息、気管支喘息、上気道咳症候群、胃食道逆流症、薬剤性咳嗽、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、肺炎、肺がんなど幅広い原因で生じます。漢方製剤の番号は診断名を示すものではなく、患者の症候、痰・鼻汁の性状、寒熱、体力、経過、基礎疾患および併用薬を踏まえて選択する処方番号です。
ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)の製品情報
麦門冬湯は、一般に「乾燥」「潤い不足」「痰が粘って出しにくい」といった咳の訴えと結び付けて理解すると、患者説明や処方意図の共有に役立ちます。市販のツムラ漢方麦門冬湯の情報では、たんをあまり伴わないコンコンとした乾いた咳、かぜの後に咳だけが残る状態、口腔・咽頭の乾燥、痰が咽頭に付着して出しにくい状態が主な使用イメージとして説明されています。
参考)ツムラ漢方麦門冬湯エキス顆粒 - 一般用漢方製剤・一般用医薬…
医療用のツムラ29番は、漢方医学的な証の評価を前提に使用されます。患者が「痰がある」と表現していても、量が多く流動性の高い痰なのか、少量だが粘って喀出しにくい痰なのかで考え方は異なります。水様性鼻汁、くしゃみ、鼻閉、喘鳴が前景にある症例と、咽頭乾燥と乾性咳嗽が前景にある症例を同じ「咳」として扱わないことが、処方選択の出発点になります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 製剤番号 | ツムラ29番 | 麦門冬湯エキス顆粒(医療用) |
| 主な効能又は効果 | 痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく | 添付文書・製品情報を確認する |
| 咳の印象 | 乾いた咳、咽頭乾燥、粘って切れにくい痰 | 症状だけで自己選択しない |
| 構成生薬 | 麦門冬、粳米、半夏、大棗、甘草、人参 | 甘草含有による相互作用・副作用に留意 |
| 成人の通常用量 | 1日9.0gを2~3回に分割 | 食前又は食間。年齢・体重・症状で調整 |
なお、一般用医薬品の「ツムラ漢方麦門冬湯エキス顆粒」と医療用の「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)」は、同じ処方名であっても、適応、用量、生薬量、剤形および購入・使用の枠組みを混同しないことが必要です。医療従事者は患者から市販薬の使用歴を聴取する際、製品名、服用量、服用回数、開始日、他の漢方薬・総合感冒薬の併用状況まで確認します。
咳に関連してツムラ製剤を説明する場合、29番以外にも候補があることを明示する必要があります。たとえばツムラ19番の小青竜湯は、水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽を伴う気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、感冒などに用いられる処方です。鼻症状や水様性の分泌物、冷えとの関連を伴う咳では、29番の乾燥性・粘稠痰主体のイメージとは異なる評価が必要です。
参考)302 Found
また、咳嗽に対する漢方製剤の位置付けは、原因疾患や病期によって変わります。鎮咳薬を求める患者の中には、発熱、呼吸困難、胸痛、喘鳴、血痰、体重減少、夜間の強い発作性咳嗽といった精査を優先すべき所見を有する例もあります。咳を「止める」ことだけを目標にすると、感染症や気道疾患、循環器疾患、悪性疾患の診断遅延につながるおそれがあります。
「ツムラの咳止めは何番か」と質問された場合は、「乾いた咳や痰が切れにくい咳なら29番の麦門冬湯が代表的だが、咳の種類によって別の処方や検査が必要になる」と説明すると、過度な単純化を避けながら実務的に伝えられます。
麦門冬湯には甘草が含まれます。甘草を含む漢方製剤やグリチルリチン酸含有製剤などとの併用では、甘草成分の重複により、偽アルドステロン症、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加、脱力感、筋肉痛、こむら返りなどのリスクが高まる可能性があります。高齢者、腎機能・心機能に課題のある患者、利尿薬使用者、複数の漢方薬を服用している患者では、特に薬剤歴を丁寧に確認します。
副作用の確認では、発疹、発赤、そう痒、消化器症状だけでなく、倦怠感、筋力低下、四肢のしびれ・痛み、浮腫なども聴取対象です。漢方薬は「自然由来だから副作用が少ない」「市販薬と同じだから安全」と受け止められやすいため、処方意図と服薬期間、受診・相談が必要な症状を具体的に伝えることが重要です。
さらに、咳嗽が2~3週間を超えて続く場合、急速に悪化する場合、38℃以上の発熱が持続する場合、息苦しさ、喘鳴、胸痛、血痰、意識障害、チアノーゼ、SpO2低下がある場合は、セルフケアや漫然とした鎮咳治療ではなく、早期の医療評価を促します。日本呼吸器学会の「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025」でも、咳嗽診療の原則および治療薬に関する項目が示されており、原因疾患の評価を踏まえた診療が求められます。
参考)咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025 - 学会誌・出版…
日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025」
患者から「ツムラの咳止めは何番ですか」と尋ねられた際は、番号だけを伝えて終えるのではなく、咳の特徴と安全性を短く確認する流れが有用です。まず、「ツムラ29番の麦門冬湯は、乾いた咳や喉の乾燥感、痰が粘って出しにくい咳で使われる代表的な漢方です」と伝えます。そのうえで、「水っぽい鼻水やくしゃみが強い咳、ゼーゼーする咳、熱や息苦しさを伴う咳では、同じではない可能性があります」と補足します。
処方薬を交付する場合は、医師の指示どおり食前または食間に服用すること、自己判断での増量・長期連用を避けること、既に服用している漢方薬・市販感冒薬・健康食品を確認することを案内します。医療用ツムラ麦門冬湯エキス顆粒の通常成人用量は、1日9.0gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与するとされていますが、実際には患者ごとの処方内容を優先すべきです。
患者向けの説明例としては、「咳止めとして有名なツムラは29番の麦門冬湯ですが、すべての咳に合う薬ではありません。今の咳が乾いた咳か、痰が多い咳か、鼻水や息苦しさがあるかで使い分けます。むくみ、血圧上昇、筋肉のつりや力が入りにくい症状があれば、甘草の影響も考えるため早めに相談してください」と表現できます。
ツムラ29番・麦門冬湯は、咳嗽診療における選択肢の一つです。番号を手掛かりにしつつも、咳の性状、罹病期間、バイタル、呼吸器所見、基礎疾患、併用薬、危険徴候を統合して評価することが、適正使用と患者安全につながります。