

「仕事中に眠い」と感じる背景には、睡眠時間が足りない状態、眠りが浅く回復感が得られない状態、体内時計と勤務時間のずれ、病気や薬剤の影響などがあります。眠気は意志の弱さや集中力だけの問題として片付けられがちですが、脳が睡眠を必要としている生理的な反応です。無理に我慢し続けると、注意力、判断力、記憶力、作業の正確性が落ちやすくなります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、日中の眠気は慢性的な睡眠不足や睡眠障害に起因する場合があるとされています。成人の必要な睡眠時間には個人差がありますが、まずは6時間以上を目安に必要な睡眠を確保し、日中の眠気で困らない状態を目指すことが重要です。ただし、「6時間眠れば全員に十分」という意味ではありません。起床時の休養感、日中の眠気、休日の寝だめの程度もあわせて評価します。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf)
特に午後の早い時間帯は、夜間の睡眠が足りていても眠気を感じやすい時間帯です。これは体内時計による自然な覚醒度の変動も関係します。一方で、会議中に何度も意識が飛ぶ、単純作業中に居眠りする、運転や機械操作で眠気を感じるといった状態は、単なる午後の眠気として放置しないことが大切です。
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
眠気対策を始める前に、「どのような眠気か」を記録すると原因を切り分けやすくなります。就寝・起床時刻、途中で目覚めた回数、昼寝、カフェインや飲酒の時刻、眠くなった業務・時間帯を1~2週間ほどメモしてください。主観的な感覚だけでなく、生活リズムと眠気の発生パターンが見えるようになります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 睡眠時間 | 平日と休日を含め、必要な睡眠時間を継続して確保できているか | 休日だけ極端に長く眠る場合、平日の睡眠不足が疑われます |
| 睡眠の質 | 中途覚醒、早朝覚醒、起床時の疲労感、熟睡感の有無を確認する | 睡眠時間だけでなく、休養感も重要です |
| 勤務形態 | 夜勤、交代勤務、長時間勤務、早朝出勤の有無を確認する | 体内時計と勤務時刻のずれが眠気を招くことがあります |
| 生活習慣 | 夕方以降のカフェイン、就寝前の飲酒、喫煙、画面視聴を確認する | 眠りの開始や睡眠の質に影響する場合があります |
| 身体症状 | 大きないびき、睡眠中の無呼吸、朝の頭痛、むずむず感などの有無 | 睡眠障害やほかの疾患の手掛かりになります |
| 薬剤 | 眠気が出る可能性のある処方薬、市販薬、飲酒との併用を確認する | 自己判断で中止せず、処方医または薬剤師へ相談します |
たとえば、平日は深夜1時に寝て朝6時に起き、休日に昼まで眠ってしまう場合、平日に積み重なった睡眠不足を休日に補おうとしている可能性があります。また、睡眠時間が長くても、家族からいびきや呼吸停止を指摘されている場合は、睡眠中に何度も覚醒反応が起き、睡眠の連続性が損なわれていることがあります。
眠気が出たときは、重要判断、投薬、採血、運転、高所作業、刃物や回転機械を扱う作業など、ミスや事故が重大な結果につながる業務を「気合いで続ける」ことが最も危険です。医療従事者であれば、患者確認や薬剤投与、記録、申し送りの精度にも影響し得ます。眠気を自覚した段階で、可能な範囲で周囲に共有し、ダブルチェックや休憩への切り替えを検討してください。
コーヒー、エナジードリンク、冷水、ガム、顔を洗うといった対策は、眠気の感覚を短時間和らげることがあります。しかし、慢性的な睡眠不足そのものを解決する方法ではありません。とくに強い眠気があるとき、カフェインと短い仮眠をしても安全に運転できる状態まで回復しないことがあるため、「眠いが帰れるはず」という判断は避けるべきです。夜勤や長時間勤務の後は、帰宅手段をあらかじめ計画することも安全対策になります。
cdc(https://www.cdc.gov/niosh/work-hour-training-for-nurses/longhours/mod11/02.html)
根本対策では、「眠くなった日に早寝する」だけで終わらせず、起床時刻を中心に生活リズムを整えることが重要です。休日に極端な寝だめをすると、週明けの就寝時刻が後ろにずれ、さらに平日の睡眠不足を招くことがあります。勤務の都合で完全に一定の生活が難しい場合でも、起床後の光、食事、入浴、就寝前の行動をなるべく規則的にすることで、睡眠の準備を整えやすくなります。
実践しやすい方法としては、起床後に朝の光を浴びる、寝床で長時間スマートフォンを見続けない、夕方以降のカフェイン摂取量と時刻を調整する、飲酒を眠るための手段にしない、就寝直前の重い食事を避ける、といった点が挙げられます。眠れないまま長く寝床にとどまる習慣が続く場合は、睡眠への焦りを強めることもあるため、生活背景や不眠の経過を含めて医療機関に相談する選択肢があります。
交代勤務や夜勤がある人は、日勤者と同じ睡眠習慣をそのまま当てはめようとしないことも大切です。勤務表に合わせて、主睡眠を確保する時間帯、仮眠の可否、勤務前後の光の浴び方、帰宅時の運転回避策を事前に決めます。個人だけの努力に依存せず、休憩を取りやすい配置、仮眠場所、ダブルチェック、勤務間インターバルなど、職場の安全管理として眠気を扱う視点が必要です。
厚生労働省「健康・医療 睡眠対策」
睡眠時間を確保する機会があるにもかかわらず、仕事中の居眠りや強い眠気が続く場合は、睡眠障害を含めた医学的な評価を受けることが大切です。厚生労働省は、日中の眠気や居眠りを主症状とする代表的な睡眠障害として、睡眠不足症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、周期性四肢運動障害、過眠症などを挙げています。原因に応じた検査や治療が必要になるため、自己流の対策だけで長期間様子を見るべきではありません。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf)
受診を検討する目安には、十分に眠ったつもりでも眠気で業務に支障が出る、会議・読書・テレビ視聴中に繰り返し寝落ちする、大きないびきや睡眠中の無呼吸を家族に指摘される、朝の頭痛や強いだるさが続く、夜間に脚の不快感で眠れない、気分の落ち込みや不安とともに眠りの問題が続く、といった状態があります。睡眠時無呼吸では、睡眠中の呼吸障害によって睡眠が浅くなり、日中の眠気につながることがあります。
kennet.mhlw.go(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-002.html)
運転中、処置中、危険な機械を扱っている最中に眠気で目を開けていられない、頭がぼんやりして状況判断が難しい場合は、直ちに安全な場所へ移動し、その作業や運転を中止してください。窓を開ける、音楽を大きくする、頬をつねるといった方法は、安全に活動できる根拠にはなりません。眠気によるミスを個人の責任感で覆い隠さず、早めの休止、上司・同僚への連絡、医療機関への相談につなげることが、本人と周囲を守る対応になります。 cdc(https://www.cdc.gov/niosh/work-hour-training-for-nurses/longhours/mod11/05.html)