


「漢方23」あるいは「ツムラ23番」は、通常、ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)を指す。医療現場では製品番号が略称として使われることがあるが、薬剤名、一般名、剤形、製造販売元および同一処方名の他社製品との違いを確認することが重要である。ツムラ製剤では識別コードが「ツムラ/23」とされ、主成分は当帰芍薬散エキスである。
当帰芍薬散は、漢方医学的には「血」の不足と「水」の偏在・停滞を伴い、冷えやすく、疲れやすく、むくみ、めまい、頭重、月経関連症状などを呈する患者像を想定する処方である。ただし、これは現代医学的な病態生理や検査診断に置き換わる概念ではない。貧血、めまい、浮腫、月経異常、不妊症などには器質的疾患や内分泌疾患、妊娠関連疾患、腎・心疾患などが含まれ得るため、当帰芍薬散を投与する前後でも必要な鑑別と検査を省略しない。
医療用電子添文においては、筋肉が全体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすい患者に対する諸症として、貧血、倦怠感、更年期障害、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病などが記載されている。適応疾患名だけでなく、このような体質・症候の条件を併せて評価することが処方判断の基盤となる。PMDA:ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)医療用医薬品情報
ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)の効能又は効果は、「筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいもの」における貧血、倦怠感、更年期障害、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病などである。更年期障害には頭重、頭痛、めまい、肩こり等が例示されている。したがって、例えば月経困難症という診断名だけで本剤を一律に選択するのではなく、冷え、易疲労、貧血傾向、浮腫傾向、めまいなどの随伴所見を含めて適合性を検討する。
通常の成人用量は1日7.5gであり、2~3回に分割して食前または食間に経口投与する。年齢、体重、症状により適宜増減される。処方オーダー、薬歴、服薬指導の際には、製品ごとに1包量や投与回数の設計が異なり得ることを確認し、単に「23番を毎食前」と慣例的に説明しないことが望ましい。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 製品番号 | ツムラ漢方製剤の23番 | 医療現場の略称として用いられることがある |
| 処方名 | 当帰芍薬散 | 当帰芍薬散エキスを主成分とする漢方製剤 |
| 主な患者像 | 虚弱傾向、易疲労、腰脚の冷え、貧血傾向など | 疾患名だけでなく証・症候を確認する |
| 通常成人用量 | 1日7.5gを2~3回に分割 | 食前または食間に経口投与、適宜増減 |
| 継続判断 | 症状・所見の改善を経過観察する | 改善がなければ継続投与を避ける |
患者への説明では、「貧血に効く薬」「むくみを取る薬」といった単一目的の表現に限定せず、体質や症状を踏まえて選択された漢方薬であること、処方された用法を守ること、自己判断で市販の漢方薬や健康食品を追加しないことを伝える。特にOTCの当帰芍薬散を併用しているケース、他院・他科で漢方薬が追加されているケースは、重複確認が必要となる。
当帰芍薬散の処方では、問診、身体診察、既往歴、妊娠可能性、服薬歴、検査所見を統合する。漢方医学でいう証は、単一症状だけで決めるものではない。冷えの部位と程度、浮腫の時間的変動、月経周期・経血量・月経痛の経過、めまいの性状、疲労感、食欲、便通、睡眠、精神症状、舌や腹部の所見などを総合的に評価する。その上で、西洋医学的な危険徴候を見逃さないことが大前提となる。
たとえば、進行性の貧血、過多月経、不正出血、急速な体重変化、持続する強い腹痛、失神、片側下肢の著明な腫脹、息切れや胸痛、妊娠中の高血圧・蛋白尿・急な浮腫は、漢方薬の調整だけで対応すべきではない。婦人科疾患、妊娠合併症、甲状腺疾患、心不全、腎疾患、静脈血栓塞栓症、鉄欠乏性貧血などを念頭に置き、適切な検査・専門科連携を優先する。
医療従事者が患者から「漢方23番を飲んでいる」「以前23番でよくなった」と聞いた場合も、前回の適応をそのまま今回の症状に当てはめない。症状の背景や重症度、ライフステージ、併存疾患、併用薬は変化し得るため、再評価の上で処方継続・変更・中止を判断する。
電子添文では、当帰芍薬散の使用にあたり、患者の証を考慮し、経過を十分に観察することが求められている。症状または所見の改善が認められない場合は、継続投与を避ける。漢方薬は長期処方になりやすいことがあるが、「自然由来だから安全」「長く飲み続けても問題ない」といった認識は適切ではない。定期的に治療目的、症状の変化、服薬アドヒアランス、有害事象、併用薬を見直す必要がある。
主な副作用として、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等の消化器症状があらわれることがある。発疹、発赤、そう痒感などの皮膚症状も、薬剤性反応を示唆する所見として確認する。患者には、開始後に新たな消化器症状や皮膚症状が出現した場合、自己判断で服用を継続せず、処方元または薬局へ相談するよう具体的に説明する。
また、他の漢方製剤等と併用する場合には、含有生薬の重複に注意する必要がある。当帰芍薬散は当帰、川芎、芍薬、茯苓、白朮、沢瀉から構成される。生薬重複は必ずしも禁忌ではないが、意図しない成分量の増加や有害事象の評価困難化につながる。処方薬だけでなく、OTC漢方薬、健康食品、煎じ薬、他院処方を含めた確認が重要である。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。効能には妊娠中の諸病が記載されている一方で、妊娠中だから慣用的に安全と判断できるわけではない。妊娠週数、母体症状、胎児状態、既往歴、併用薬、産婦人科での評価を踏まえ、治療目的と必要性を明確にした上で対応する。高齢者では一般に生理機能が低下しているため、減量するなど注意が必要である。PMDA:ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)電子添文
当帰芍薬散の治療効果を評価する際は、「何となくよくなった」という印象だけに依存せず、開始前に患者と評価項目を共有するとよい。月経関連症状であれば、月経周期、痛みの程度、鎮痛薬使用日数、経血量、不正出血、日常生活への支障を記録する。更年期症状であれば、冷え、めまい、頭重、肩こり、睡眠、疲労感、気分の変化などを経時的に追う。浮腫を伴う場合は、体重、靴や衣類の圧痕、尿量、夕方の下腿腫脹などを確認し、必要に応じて腎機能・電解質・心機能評価につなげる。
服薬指導では、食前または食間という用法の意味を患者の生活リズムに合わせて具体化する。食間は食事と食事の間で、一般に食後およそ2時間を目安とするが、処方医・薬剤師の個別指示を優先する。飲み忘れ時の対応、顆粒の味やにおいへの対処、他の薬との服用タイミングについても、患者が実行できる形で説明する。嚥下困難、悪心、食欲低下がある患者では、服用継続が難しい背景そのものを再評価する必要がある。
漢方23番は、婦人科領域を中心に広く認知される処方である一方、貧血、めまい、浮腫、倦怠感といった非特異的症状を含む患者に使用され得る。だからこそ、処方時には「適応病名」「証・症候」「鑑別診断」「安全性」「効果判定」の5点を一連の診療プロセスとして扱うことが重要である。改善が得られない場合、有害事象が疑われる場合、あるいは症状の性質が変化した場合は、処方の漫然継続を避け、診断と治療戦略を改めて見直す。