

インフルエンザにかかったとき、「早く治る食べ物」や「免疫力を上げる食材」を探す人は少なくありません。しかし、特定の食品だけでインフルエンザを治療したり、抗インフルエンザ薬に代わる効果を得たりできるわけではありません。食事の役割は、治療そのものではなく、発熱や発汗、食欲不振などによって起こりやすい脱水やエネルギー不足を防ぎ、療養中の体を支えることです。
厚生労働省は、インフルエンザの対策として、十分な休養、バランスの取れた栄養摂取、こまめな水分補給を挙げています。特に発症後は、高熱による発汗に加え、鼻水、呼吸による水分蒸散、下痢や嘔吐などで水分が失われることがあります。そのため、食べられない時期には「栄養価の高い食事を完食すること」よりも、「飲めるものを少しずつでも継続して摂ること」を優先します。厚生労働省:令和6年度インフルエンザQ&A
医療従事者が患者へ説明する場合は、「食べられなければ無理をしない。ただし、水分まで取れない状態は別問題である」と切り分けると理解されやすくなります。食欲は症状の改善とともに戻ることが多いため、急性期には食べられる形態を選び、回復期に主食・たんぱく質・野菜や果物などを徐々に整えていく方法が現実的です。
食事内容は、発熱、のどの痛み、吐き気、下痢、強い倦怠感など、患者ごとの症状によって変える必要があります。共通する考え方は、消化管への負担を抑え、口にしやすく、水分・エネルギー・電解質を補えるものを優先することです。高熱でつらい時期は、固形物が入らなくても、水分やゼリー類を少量ずつ摂取できればよい場合があります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 水・白湯・麦茶 | 発汗や口渇があり、普段どおりに飲食できる場合の基本的な水分補給 | 冷たさが刺激になる場合は常温または温かめにする |
| スープ・みそ汁 | 水分に加え、塩分や少量のエネルギーを補いやすい | 脂が多いものや刺激の強い香辛料は症状により控える |
| 経口補水液 | 発熱、発汗、下痢、嘔吐などで脱水が疑われる場合に用いる選択肢 | 腎疾患、心不全、糖尿病などでは成分確認と医療者への相談が重要 |
| おかゆ・雑炊・うどん | 主食として糖質を補いながら、比較的食べやすい | 一度に多く食べず、少量を複数回に分ける |
| ゼリー・プリン・ヨーグルト | のどの痛みや食欲低下があり、固形物がつらい場合に選びやすい | 下痢が強い場合は乳製品で症状が悪化しないか個別に確認する |
| 卵・豆腐・白身魚 | 回復に伴い、たんぱく質を追加したい段階に適する | 揚げ物ではなく、蒸す、煮るなど脂質を抑えた調理がよい |
インフルエンザ時の食事は、病期を一律に考えず、「高熱で食べられない時期」と「解熱して食欲が戻り始める時期」に分けると組み立てやすくなります。急性期は水分を最優先にし、摂取できる範囲でエネルギー源を補います。回復期に入ってからは、主食だけで済ませず、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを含む食品を少しずつ増やしていくことがポイントです。
例えば、発熱が強い日は「具の少ないスープ、ゼリー、おかゆを数口ずつ」で十分なことがあります。翌日に熱が下がり、空腹感が戻ってきたら、「卵入り雑炊、豆腐入りうどん、白身魚の煮付けとごはん」といった形で、消化しやすいたんぱく質を追加していきます。回復を急ぐために、急性期から肉料理や揚げ物を多量に食べる必要はありません。
また、果物は水分や糖質を補う選択肢になりますが、酸味がのどにしみる人もいます。バナナ、加熱したりんご、すりおろしりんごなどは食べやすいことがあります。一方で、食品の「食べやすさ」には個人差が大きいため、一般論を押し付けず、本人が受け入れられる温度、におい、食感を尊重することが重要です。
インフルエンザの療養中に絶対に禁止される食品は多くありませんが、症状を悪化させたり、脱水や胃腸症状を助長したりする可能性があるものには注意が必要です。代表例はアルコールです。アルコールは脱水リスクを高めるほか、発熱時の体調をさらに悪化させるおそれがあり、服薬中には薬剤との相互作用も問題になります。少なくとも発熱や体調不良がある間、また処方薬を使用している間は避けるべきです。
脂質の多い揚げ物、濃厚なラーメン、焼肉などは、吐き気、胃もたれ、下痢がある場合に負担となりえます。唐辛子など刺激の強い香辛料、極端に熱い飲食物、炭酸飲料も、のどの痛みや胃腸症状が強い人には向かないことがあります。カフェイン飲料については、一律に禁止する必要はありませんが、動悸、胃部不快感、睡眠障害がある場合や、水分摂取が十分にできない状況では控えめにする判断が妥当です。
経口補水液は、脱水時の水分・電解質補給を目的とした製品であり、日常的な嗜好飲料ではありません。発熱、発汗、下痢、嘔吐などで体液喪失があり、水だけでは補いにくい場合には選択肢になります。ただし、製品によってナトリウムや糖質の含有量が異なり、腎機能低下、心不全、高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある人では注意が必要です。患者の年齢、体格、尿量、併存疾患、摂取量を踏まえ、必要に応じて主治医や薬剤師に相談するよう説明します。
「スポーツドリンクなら何でも同じ」と考えるのも適切ではありません。スポーツドリンクは飲みやすく、ある程度の糖質や電解質を含むものの、経口補水液とは目的や組成が異なります。軽い発熱や食欲不振で水分を補う目的なら、本人が飲みやすい水、お茶、スープなどを含めて選択できますが、明らかな脱水が疑われる場合は、医療機関への相談を含めて対応を検討します。
インフルエンザでは、食事が数食とれないこと自体よりも、水分が取れない、意識状態が変化する、呼吸状態が悪いといった状況を見逃さないことが重要です。特に乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある人、免疫機能が低下している人は、脱水や肺炎などを起こした場合に重症化しやすいため、早めの評価が必要になります。
受診や医療機関への相談を検討すべき目安としては、ほとんど水分を飲めない、飲んでも繰り返し吐く、半日程度以上ほとんど尿が出ない、口の中が強く乾く、ぐったりして反応が鈍い、呼吸が苦しい、胸痛がある、唇や顔色が悪い、高熱が続いて全身状態が悪化している、といった状態が挙げられます。小児では、泣いても涙が少ない、目が落ちくぼんで見える、いつもより明らかに元気がない、呼びかけへの反応が乏しいといった変化にも注意します。
医療従事者が「インフルエンザのときのおすすめの食事」を説明する際は、献立の提案だけで終わらせず、「食べられなくても水分が取れて尿が出ていれば、まずは少量ずつ様子を見る」「水分も保てず尿量が減るなら、食事の工夫より相談・受診を優先する」という行動基準まで具体的に伝えることが大切です。厚生労働省も、休養、栄養、水分補給を基本的な対策に位置付けていますが、症状の重さやリスク因子に応じた医療的判断が前提となります。厚生労働省:インフルエンザ総合ページ
インフルエンザ時の食事は、豪華な献立や特別な健康食品を用意することが目的ではありません。水分を切らさず、食べられる量から始め、症状の改善に合わせて主食とたんぱく質を戻していくことが基本です。そして、脱水や呼吸状態の悪化が疑われる場合には、食事で様子を見ることにこだわらず、速やかに医療機関へ相談することが安全につながります。

インフルエンザワクチン予約受付中 のぼり旗(レギュラー60x180cm 左チチ 標準) N3NY_AR グッズプロ/GoodsPro