スルピリド錠は、有効成分「スルピリド」を含む処方箋医薬品です。医療現場では、先発品名の「ドグマチール」で知られている場合もあります。薬効分類上は精神神経用剤に位置付けられ、ドパミンD2受容体を遮断する作用を持ちます。統合失調症に対しては主に陽性症状の改善に関与し、うつ病・うつ状態に対しては抗うつ作用を示すとされています。
一方で、50mg錠など胃・十二指腸潰瘍の適応を持つ製剤では、胃粘膜血流を改善する抗潰瘍作用、末梢のD2受容体遮断を介した消化管運動促進作用も期待されます。そのため「胃の薬として処方されたのに、精神科の薬なのか」と患者が戸惑うことがありますが、スルピリドには消化器領域と精神科領域の双方で承認された効能があります。ただし、全ての含量・全ての製剤に胃・十二指腸潰瘍の適応があるわけではありません。100mg錠・200mg錠の一部製剤では、効能又は効果が統合失調症とうつ病・うつ状態に限定されています。処方意図を判断する際は、薬剤名だけで決めつけず、規格、添付文書上の適応、処方内容、患者背景を総合的に確認することが重要です。PMDA:スルピリド錠50mg「サワイ」電子添文
pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/04987080999881)
なお、スルピリド錠は患者の自己判断で開始・中断・増減すべき薬ではありません。症状の変化、副作用が疑われる症状、妊娠希望、他院からの処方追加などがある場合は、処方医または薬剤師に速やかに情報共有する必要があります。
スルピリドの効能又は効果と用法・用量は、適応ごとに異なります。胃・十二指腸潰瘍の適応を持つ50mg製剤では、通常成人の胃・十二指腸潰瘍に対してスルピリドとして1日150mgを3回に分けて経口投与します。統合失調症では通常1日300~600mgを分割投与し、年齢や症状により調整したうえで、1日1,200mgまで増量可能とされています。うつ病・うつ状態では通常1日150~300mgを分割投与し、最大1日600mgまでの増量規定があります。
ただし、用量から処方目的を一意に断定することは適切ではありません。例えば1日150mgは胃・十二指腸潰瘍とうつ病・うつ状態の双方で添付文書上の投与範囲に含まれます。診療科、症状経過、併用薬、過去の治療歴、処方医の意図を確認して初めて、適応の妥当性を評価できます。特に、低用量だから消化器目的、高用量だから精神科目的と機械的に分類するのではなく、処方箋や診療情報に基づく確認を徹底することが安全な薬物療法につながります。PMDA:日本薬局方 スルピリド錠 電子添文
pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300119_1179016F1191_1_07)
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 胃・十二指腸潰瘍 | 通常成人1日150mgを3回に分割経口投与 | 胃潰瘍適応は主に50mg製剤の電子添文で確認する |
| 統合失調症 | 通常成人1日300~600mgを分割経口投与 | 年齢・症状により調整し、1日1,200mgまで増量可能 |
| うつ病・うつ状態 | 通常成人1日150~300mgを分割経口投与 | 年齢・症状により調整し、1日600mgまで増量可能 |
| 剤形・規格 | 50mg、100mg、200mgなどがある | 規格によって承認効能が異なる製剤があるため確認が必要 |
精神科領域におけるスルピリドの主な薬理作用は、ドパミンD2受容体遮断作用です。ドパミン神経伝達を抑えることで、統合失調症の陽性症状の改善に関与します。また、うつ病・うつ状態に対する適応も有しており、精神症状の治療目的で処方されることがあります。抗ドパミン作用は薬効の基盤である一方、錐体外路症状やプロラクチン上昇といった副作用の背景にもなります。
胃・十二指腸潰瘍に対しては、胃粘膜血流を改善する作用による抗潰瘍作用に加え、消化管運動を促進する作用が示されています。患者に説明する際は、「気分の薬だけ」「胃薬だけ」と単純化せず、処方された目的に応じて作用が異なる薬であることを伝えると理解を得やすくなります。
スルピリドで特に確認したい副作用は、内分泌機能異常、錐体外路症状、眠気・めまい、消化器症状、体重増加などです。内分泌系では、プロラクチン値の上昇を背景に、乳汁分泌、女性化乳房、月経異常、乳房腫脹、勃起不全、射精不能などが現れることがあります。患者から自発的に申告されにくい領域であるため、長期投与時には症状を具体的に尋ね、必要時は検査や治療方針の見直しにつなげます。
錐体外路症状としては、振戦、筋強剛、流涎などのパーキンソン症候群、アカシジア、ジスキネジア、舌のもつれ、言語障害、頸筋捻転、眼球回転、嚥下困難などが報告されています。長期投与では、口周部などの不随意運動が中止後も持続する可能性がある遅発性ジスキネジアにも留意が必要です。症状があれば、投与の継続可否、減量、薬剤変更、対症療法の必要性を評価します。
重大な副作用として、悪性症候群、痙攣、QT延長・心室頻拍、無顆粒球症・白血球減少、肝機能障害・黄疸、遅発性ジスキネジア、肺塞栓症・深部静脈血栓症が挙げられます。高熱、強い筋肉のこわばり、意識の変化、発汗、頻脈、嚥下困難などは悪性症候群を疑う重要な所見です。また、動悸、失神、胸痛、息切れ、片側の下肢痛・腫脹なども見逃せません。これらの症状を認めた場合は、漫然と次回受診を待たせず、緊急性を評価して速やかな受診につなげる対応が求められます。PMDA:スルピリド錠50mg「サワイ」副作用・使用上の注意
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スルピリドは、本剤成分に対する過敏症既往がある患者には投与しません。また、プロラクチン分泌性下垂体腫瘍であるプロラクチノーマの患者では、抗ドパミン作用によってプロラクチン分泌が促進され、病態を悪化させるおそれがあるため禁忌です。褐色細胞腫またはパラガングリオーマが疑われる患者も、急激な昇圧発作を起こすおそれがあるため禁忌に該当します。
併用薬の確認では、QT延長を起こすことが知られている薬剤との併用、メトクロプラミド・チアプリド・クロルプロマジン・ハロペリドールなど抗ドパミン作用を持つ薬剤との併用に注意します。併用によってQT延長や心室性不整脈のリスク、内分泌機能異常や錐体外路症状のリスクが高まるおそれがあります。レボドパなどのドパミン作動薬とは作用が拮抗する可能性があり、パーキンソン病治療との関係では特に慎重な評価が必要です。アルコールや中枢神経抑制剤では中枢神経抑制作用が増強するおそれがあるため、飲酒状況も含めて確認します。
腎機能障害患者では高い血中濃度が持続するおそれがあります。高齢者では腎機能が低下していることが多く、錐体外路症状などの副作用に注意しながら、用量や投与間隔を考慮して慎重に投与します。QT延長のある患者、著明な徐脈や低カリウム血症などQT延長を起こしやすい患者、心・血管疾患や低血圧のある患者、パーキンソン病またはレビー小体型認知症の患者、脱水・栄養不良などで身体的に疲弊した患者にも個別のリスク評価が必要です。
妊婦または妊娠している可能性がある患者では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に限って投与します。妊娠後期に抗精神病薬が投与された場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性などの離脱症状または錐体外路症状が現れた報告があります。授乳中は乳汁中への移行が報告されているため、授乳しないことが望ましいとされています。服用目的と安全性を正しく理解するには、患者ごとの背景を踏まえ、最新の電子添文と処方医の指示を確認する姿勢が不可欠です。PMDA:日本薬局方 スルピリド錠 禁忌・相互作用・特定患者群への注意 pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300119_1179016F1191_1_07)