クローン病は、口から肛門までの消化管のいずれの部位にも発生し得る慢性の炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory Bowel Disease)です。 病変は消化管壁の全層に及ぶ「全層性炎症」を特徴とし、非連続性(跳躍性)の病変分布を示すことが典型的な所見です。 炎症が持続すると、腸管の狭窄(狭くなる)、穿孔(穴が開く)、瘻孔(異常な通路ができる)などの重篤な合併症を来す可能性があります。
nanbyou.or(https://www.nanbyou.or.jp/entry/81)
1932年に米国のBurrill B. Crohn医師によって初めて報告された疾患であり、彼の名にちなんで「クローン病」と命名されました。 潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患の二大疾患に位置づけられ、日本では特定難病(指定難病96)に指定されています。
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日本のクローン病患者数は増加傾向が続いています。2023年時点の全国有病者数は約9万5,700人(95%信頼区間:6万1,100〜13万400人)と推計され、2015年の調査と比較して8年間で約1.4倍に増加しています。 人口10万人あたりの年間有病率は77.0人(男性:112.9人、女性:43.0人)で、男性にやや多い傾向が認められます。
toho-u.ac(https://www.toho-u.ac.jp/press/2025_index/20250919-1540.html)
特定医療費(指定難病)受給者証保持者数の推移をみると、1976年度には128人でしたが、2013年度には3万9,799人、2023年度には5万2,108人に達しています。 この増加背景には、診断技術の進歩、認知度の向上、食生活の欧米化などの環境要因の変化が関与していると考えられています。
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| 調査年 | 有病者数(推計) | 備考 |
|---|---|---|
| 2015年 | 約6.8万人 | 全国疫学調査(基準) |
| 2023年 | 約9.6万人 | 8年間で1.4倍に増加 |
| 2023年度 | 52,108人 | 特定難病受給者証保持者数 |
クローン病の病因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因に環境要因(食事、腸内細菌、感染など)が複雑に絡み合い、腸管粘膜の免疫系に異常反応が生じることで発症・持続すると考えられています。 特定の遺伝子多型(NOD2/CARD15など)が疾患感受性に関与することが報告されていますが、単一遺伝子疾患ではなく多因子疾患です。
kompas.hosp.keio.ac(https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000800/)
環境要因としては、高脂肪食・高蛋白質食の摂取、動物性脂肪の多い食生活、喫煙(特にクローン病では増悪因子として確立)、腸内細菌叢のバランス異常(dysbiosis)などが関与しているとするエビデンスが蓄積しています。 一方、潰瘍性大腸炎とは異なり、喫煙はクローン病では発症リスクを増加させ、術後再発率も高めることが知られています。
kyorin-gastro(http://kyorin-gastro.com/patient/diseases-04.html)
asai-geka.sakura.ne(https://asai-geka.sakura.ne.jp/ibd-cd)
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クローン病の臨床症状は多様で、病変の部位(小腸型、小腸・大腸型、大腸型)や活動性によって異なります。 主な消化器症状として、慢性の下痢(水様便〜粘液便)、腹痛(特に右下腹部痛)、腹部膨満感、悪心・嘔吐などが挙げられます。 全身症状としては、発熱(38℃以上の弛張熱を呈することも)、体重減少、易疲労感、貧血などが頻度に認められます。
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特徴的な所見として、約3分の1の患者で肛門病変(痔瘻、肛門周囲膿瘍、裂肛)が初発症状または合併症として出現します。 小腸病変を有する患者では、栄養吸収障害による低アルブミン血症、ビタミンB12欠乏、鉄欠乏性貧血などを来しやすく、成長期の小児では成長障害を呈することもあります。
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クローン病の診断は、臨床症状、内視鏡所見、画像診断、病理組織学的所見を総合して行われます。 日本消化器病学会および厚生労働科学研究班による「潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(令和5年度版)」では、以下の項目が診断の根拠とされています。
ibdjapan(http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf)
内視鏡所見では、非連続性(跳躍性)の潰瘍、縦走潰瘍、敷石様所見(cobblestone appearance)、肛門病変(痔瘻など)が特徴的です。 病理組織学的には、非乾酪性類上皮細胞肉腫(granuloma)の存在が診断的所見ですが、全症例で認められるわけではありません。 画像診断では、CTエンテログラフィやMRエンテログラフィにより、小腸病変の範囲、腸管壁肥厚、狭窄、瘻孔、膿瘍などの合併症を評価します。
ncchd.go(https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/ibd/cd.html)
鑑別診断が必要な疾患としては、感染性腸炎(結核、アメーバ、カンピロバクターなど)、他の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、Behçet病腸炎)、腸管リンパ腫、NSAIDs腸症、虚血性腸炎などが挙げられます。 特に腸結核はクローン病と類似した内視鏡所見を呈することがあり、結核菌の検出やPCR検査、ツベルクリン反応などで鑑別が必要です。
ibdjapan(http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf)
潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(令和5年度版)PDF